混乱百花繚乱

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チョコをゆっくりと口の中で味わう。 美味しいとは快感だ。この体になって唯一享受出来る刺激。 この刺激をこうして、味わえるうちにゾンビ共をなんとかしたい。 残された人類にも。私にも。ゆっくりとゾンビの滅びを待つ余裕などない。 攻撃は最大の防御。 「メソメソ泣いて死ぬなんて、ダサくて無理にゃーん」 そんな事を言いながらペロリと食べ終えた。 お行儀なんか知るもんかと、内側のフィルムに付いたチョコもペロッと舐めとる。 「はぁ。チョコパフェお腹いっぱい食べたい……オムライスとかステーキとか食べたい」 ため息混じりに本音を吐露するが、日記にはエモく綴ると決めていたので。 戻って来たら寮母さんの究極に具が少ない、水みたいなコンソメスープを沢山飲みたい。 と、言うようなことを書いておこうと思った。 その方が健気さ(プラス)五点ぐらいは演出が出来るだろう。 チョコバーを食べ終え。フィルムを丁寧にゴミ箱に捨ててから続きを書こうかと思ったら、指先がチョコで汚れていた。 ふむと思い、ペロッと舐めたいところを我慢して。ロッカーに油紙があったと思い出す。 それで油分を取ろうと思った。ティッシュは高級品。今や医療品となりつつある。 何しろこのベッドに使われている、リネンだって貴重な資源。寮母さん達がいつも清潔に保っていてくれている。 それに汚してしまったら、次にここを使う人に申し訳ない。 手紙の筆が止まっているのはご愛嬌。 出撃までにはまだ時間がある。 手紙(遺言)くらいゆっくりと私のペースで書きたい。 そっと立ち上がり、静かにロッカーを開けると、中にはズラリと私ご自慢の相棒達が佇んでいた。 グロック17、デザートイーグル、ドラグノフ狙撃銃が二丁。PSG-1、ファマスなど。 どれも私が自らピンクや水色カラーにリペイントしていてどれも可愛いし、尊い。 「グロック17とデザートは9x19mmパラベラム弾にルガー弾、NATO弾、これは露払い用。イーグルちゃんの.50 AE弾はロマン」 ロッカーの中からグロックを包んでいた、油紙の一枚をそっと手に取り。指先の油脂を拭き取りながら相棒達を見る。 (うん。手入れ、弾倉、全て抜かりなし。使い込んでいてジャムる事もない) ファマスは突撃銃で狙いを定めるのに最適。拡張性も良い。ドラグノフはガス装填式。PSG-1は火薬式。どんな環境にでも対応出来る。 それに弾倉が尽きれば銃身で戦う。 そうなった時に、軍用サバイバルナイフ。グレネードも多数準備済み。 メディカルボックス、レーション、カロリーバーとカスタマイズした塩酸モルヒネ系の薬。 ゾンビの群れを突っ切るのには、改造済みのナイトロエンジン搭載の大型バイク。 私を相手にするならば、シモ・ヘイヘとフナサカで構成された一個師団を用意して頂きたい。 「って、マジで用意されたら面倒すぎるんだけどね」 それでも戦えと言われたら戦う。ゾンビを一匹でも多く倒すのが私の望み。 何故ならばと、頭の中で思ったが。ここからは手紙に書くべきだろうと思い。 静かにロッカーの扉を閉めて。再び小さな机に向かい、綺麗になった指先でウサちゃんのペンを持つのだった。
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