第3話 アリスからの手紙~SIDEジョセフ~

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第3話 アリスからの手紙~SIDEジョセフ~

**********************  お父様へ  小さい頃ぶりの手紙ですごく緊張しています。  お父様はいつも言葉足らずだから誤解されることも多いけど、  私やお母様はいつもそんなお父様の隠れた優しさが大好きで救われてました。  昔、私はお父様にひどいことを言いました。  お父様が田舎の領主だから貧乏なんだって。  ずっと謝ることができずにいました。  ごめんなさい。  お父様の苦労も知らずに、ひどいことを言いました。  一年前にお父様が病気になった時、すごく怖かった。  お父様がいなくなっちゃうって思って、怖くて。  でも、隣にいたお母様が私よりも辛いはずなのに、  治療薬を探す、絶対に私が探して見せる、って言ってて。  だから、お母様の心を私が引き継ぎます。  絶対にお父様の治療薬を見つけて帰って来るから。  待っていてほしいです。  ずっとずっと、生きていてほしいから。  もっと生きてほしいから、私に時間をちょうだい?  体にはくれぐれも気をつけてね。  あ、朝ごはんはきちんと食べてね!  すぐお父様は朝ごはん食べずにお仕事行っちゃうから!  絶対だよ!!                            アリス』 **********************  アリスからの手紙を閉じたジョセフは天井を見上げて息を吐く。  そうしてこみあげる気持ちを押し込めると、大事に封筒に手紙を入れてテーブルに手をついた。 「アリス、嫁にいく時のような手紙はやめてくれ」  そうして呟いたジョセフは、棚に飾ってあった指輪を見つめる。 「久々につけるよ、お前と揃いの指輪」  それは妻のミレーヌとの結婚指輪だった。  一緒に着けてほしいとせがまれたが、若い時のジョセフは拒んだ。 「綺麗なまま、だな」  傷つくのが怖くてずっとつけられずにいた結婚指輪をつけて、上の階へと向かう。  眠るように静かに息を引き取ったミレーヌの頬を撫でる。 「何も、結婚して25周年という記念の日に逝かなくてもいいじゃないか……」  声を震わせながらゆっくりとミレーヌの髪を撫でて呟く。 「あいつの無事を祈っていてくれ、ミレーヌ」  目を閉じて、ジョセフはそう願うと名残惜しそうに立ち上がってシャツの袖に手を通す。  ゆっくりと朝日が昇ってきたのを窓から見て、ジョセフは階段を下りていった──。
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