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やがて皆が集まりだす。右に固まる男性たちだが、話題を多く持たない卓也は縁側の端に座る。そこへ近づく美咲。同僚だし、惚れてるわけでもない。話べたでも、あるていどは会話も成立させられるだろう。佳子が、座る場所を変えるのはみっともないと敬遠するが、目は卓也をみつめていた。
彼は男お多福顔を緩ませて携帯電話の画面をみつめている。変なサイトでも見ているのか、憲治のことから、だれでも男性は変態みたいなところがあると、半ば信じている。
「えっちをみてるの」
それに首を振り、頭を上げる。
「お姉ちゃん。夕ご飯はいるかと。食べにきているんだよ」
あきれたように笑う。それはいい。なにか佳子を呼ぶような話題はないか。
「コーラなんだ。未成年だから」
「うん」
どうも、盛り上げるのは下手だ。しかし、携帯電話のストライプに気づく。透明なゴルフボールほどの大きさのものが下がり、中に細かく金や銀の粒が揺らすたびに舞う。
「おもしろいね。ケイ。きてきて。変なの持ってる」
そんなにおかしくも変でもないが、口実だ。
佳子は、迷惑そうな顔を作るが、腰は浮く。
「なんなの。そうだ、台風のときは野菜も少なかったね」
隣へくると関係ないことを喋る。どっちでもいいと美咲は思う。ちょとトイレと立ち上がる。男性を丸め込む専門家だし、あとはどうにかするだろう。トイレも色々な口実につかえる。
美咲もあとは食べることに専念する。貝類、当然魚も好きだ。串物、鶏肉も好きだが、正樹と一緒みたいで遠慮したい。
(べつに気にすることはないけど)
今日も仕切る正樹は、同僚として頼もしい存在ではあるし、憲治のことがまだ忘れられないでいる。
会わなくてもいいけれど、忘れられない。この思いがどこからくるのか知りたい。それでなければ、次の恋はできない。火が 消えても冷めにくい鉄なべみたいな恋もあるのか、その出所を探したいのだ。
十一 了
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