1/1
前へ
/163ページ
次へ

「勢いで来ちゃったけど。本当に良いの?」 「正直ちょっと、逃げ出したいです」 「うん。でもごめん、逃すつもりないよ」  それまでどこか遠慮がちに握られていた手は、不意に指を絡めて握り直され、言葉通り離しては貰えない空気が漂う。  だから私は無言のまま小さく頷いて、緊張で感覚の鈍い指先に力を込めて彼の手をしっかりと握る。  そうだ。後戻りなんて出来なくて良い。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3709人が本棚に入れています
本棚に追加