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(三)
「友だちの紹介で知り合った子でさ。でも俺、普段は格好とか無頓着でさ。超ダサいの」
「え、そうなんですか⁉︎」
ダサいという言葉と見た目の印象が違いすぎて、思わず大きな声が出てしまう。
そんな私を見て、鈴浦さんは少し驚いたように目を見開くと、今度は可笑しそうに肩を揺らしてそんなに驚くかなと呟いた。
「今日はね、仕返しがしたかったから気合い入れたんだ。ムダになったけど」
「そう、ですか」
「そうなんです。果穂乃に……あ、今日のパーティーの主役の新婦ね。あの子には財布くらいに思われてたんだろうなって」
「財布だなんて」
「それがマジなの。都合よく呼び出されては、色々買わされたり奢らされたんだ。さすがに大金は貢いでないけどね」
「彼女さんには、鈴浦さんとお付き合いするつもりがなかったってことですか」
「そうだろうね。それに彼女の結婚相手、爽やかなイケメンだったよね。どうやら同僚で仕事も出来る有望株らしくて、あの子の男に対する判断基準は顔と金なんだなって頭が冷えた」
そういえば、鈴浦さんは新婦の前で髪をボサボサにして眼鏡をかけて印象を変えていたっけ。もしかしたら、あの雰囲気がいつもの感じなんだろうか。
こんな素敵な人より大輔を選んだ理由が分からないけれど、つまり彼女は鈴浦さんの本当の姿を知らなかったってことなのかも知れない。
でもそう考えると、見た目や地位で人を精査するだなんて、かなり失礼な話じゃないだろうか。
「随分と失礼な話ですね」
「まあ、間違ってあんな女と付き合うより、捨てられて正解だったよ。俺にだって選ぶ権利はあるし、願い下げだよね」
苦笑する鈴浦さんを見ていると、甘いはずのパンケーキはあまり美味しく感じられず、私は少しぬるくなったラテをゆっくり飲んでフォークをテーブルに置いた。
「ごめんね、陰気な話過ぎたね」
「いえ。大丈夫です」
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