(二十七)

3/3
前へ
/163ページ
次へ
「うわぁ、すごく美味しそうです」  分厚く切った野菜たっぷりのポークジンジャーに、小松菜ときのこたっぷりの和風パスタ。オニオンコンソメスープは、薄くスライスした玉ねぎを炒めて粉末スープと合わせただけらしい。どれも良い香りで食欲をそそられる。 「よし、じゃあいただこうか」  最初に会った日みたいに隣同士並んで手を合わせると、凌さんが缶ビールを開けてグラスに注ぐ。 「いただきます」  用意されたおしぼりで手を拭くと、早速ポークジンジャーにナイフを入れる。  たっぷりとソースをまとった豚肉を頬張ると、ジュワッと口の中で旨みが溢れる。ソースがよく絡んだ野菜もトロッとしていて美味しい。 「すっごく美味しいです」 「そう? 良かった」  料理をするためか、前髪をピンで留めて綺麗な顔が剥き出しになった凌さんは、なんだか可愛らしくって、いつもより幼い感じに見える。  不躾に顔を見つめてしまった私に、凌さんはどうかしたのかと首を傾げ、その姿も可愛くて見てる方が恥ずかしくなってくる。 「顔真っ赤だよ」 「いや、ピンで髪を留めてるのが可愛くて」 「ああ、取り忘れてた」 「できればそのままで。めちゃくちゃ可愛いので」 「こんなオッサンに可愛いなんて言うの、秋菜ちゃんだけだよ」 「凌さんはオッサンじゃないですよ」 「ありがと」  そんな雑談をしながら凌さんの手料理とお酒を楽しむと、あっという間に時間は過ぎて、食べ切れるか不安だった食事も全部平らげてしまった。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3725人が本棚に入れています
本棚に追加