(二十九)

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(二十九)

 鳥の囀りが聞こえ、ゆっくりと目を覚ますと、隣に凌さんの姿はなくベッドが少しひんやりとしている。 (もう起きてるのかな)  ぼんやりとした頭で色々考えながら体を起こすと、寝室のドアが開いて、お風呂上がりらしい凌さんは、コーヒーを持って現れた。 「もう起きて平気?」  昨夜は抱き潰した自覚があるのだろう。腰の辺りがズンと重たく、お腹の奥にはまだ彼が入っているようで違和感がたっぷりあるけれど、大丈夫ですと答える。 「おはようございます」 「おはよう」  チュッとキスを交わすと凌さんは再びベッドに入り、ヘッドボードにもたれて淹れてきたコーヒーを飲みながら、私の視線に気付くと飲むかと顔を覗き込んでくる。 「一口ください」 「ん。熱いよ」  マグカップを受け取ってコーヒーを啜ると、香ばしい匂いに一気に目が覚めた。 「ありがとうございます」  凌さんにマグカップを返すと、彼を真似てヘッドボードにもたれかかり、今何時ですかと窓の外に視線を移す。 「九時過ぎ。後で周り散歩してみる?」 「良いですね。森林浴」 「この時期だから空気も澄んでるよ。でも今日は冷えるし寒いかも知れない」 「くっついてれば大丈夫でしょ」 「なに。そんな可愛いこと言うと、ベッドから出したくなくなるんだけど」 「いや、それはもうお腹いっぱいです」  腰がヤバいと凌さんを睨むと、ごめんと困ったように笑いながら肩を抱かれてこめかみにキスされる。 「天気も良いし、ちょっと足伸ばして遊園地に行っても良いかもね」 「遊園地ですか。子供の頃以来行ったことないです」 「だよね。俺も全然行かない」 「でも、どうして遊園地なんですか」 「秋菜とデートらしいデートってあんまりしてないからね。カフェ巡りも良いけど、定番のスポットも悪くないかなって」 「嬉しいです。ありがとうございます」
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