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今抱えている業務との調整を考えながらデスクに戻ると、忙しなく電話応対をする美鳥に資料を見せ、打ち合わせしようと口パクで伝える。
そして彼女の仕事に区切りがつくまでは、私も別の仕事に取り掛かり、デザインを描き上げる。
美鳥の手が空いたのはそれから二時間ほど経ってからで、打ち合わせブースに移動すると、資料を見ながら引き継ぎを受ける。
「とりあえず、明日の打ち合わせの時に担当者としてご挨拶からだね。私も同席するけど、先方もデザイナーと直接やり取りしたいって話だから」
「でもメンズ向けのアパレルなのに、なんでまたうちとコラボを?」
「それはほら。ちょっと前に、女優の三笠悠菜のSNSでうちの商品がプチバズりしたでしょ」
「ああ。でも女優さんだしレディースのイメージじゃないの?」
「いやいや、うちの顧客は確かに女性の割合が多いけど、革製品の方は男性向けのアプローチがまだまだ出来るし、風呂敷や手拭いだって需要はあるよ」
「まあ確かにね」
「ターコイズウィングさんは勢いがあるから、コラボすることでうちにもメリットは充分ある」
美鳥はそう言うと、明日のやり取りがスムーズに行くように詳細を詰めて説明し始める。だから私も逐一質問し、必要なことをペンで書き込んで三十分ほどの打ち合わせは終了した。
「こんなところかな」
「そうだね。万が一、美鳥が同席出来なくても大丈夫な程度には確認出来た」
「おやおや。そんなに私が邪魔ですか」
「そういう意味じゃないって」
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