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「ふふ。冗談だよ。あ、ターコイズウィングさんといえば、社長がめちゃくちゃイケメンらしいよ」
「へえ」
「なにそのうっすい反応」
「だって。顔で仕事する訳じゃないでしょ」
「なに言ってんの。新たな出会いになるかも知れないじゃない! あ、企画の北原さんもかっこいいけど、ご結婚されてるんだよね」
「……美鳥、あんた仕事中になに考えてんの」
「違う違う。営業として、取引先の情報は話の切っ掛けになるから聞いてるだけだってば」
「はあ、そうですか」
「あ、ちょっと秋菜!」
またどうでもいい話をし始める美鳥を置いてデスクに戻ると、企画の概要を見ながらネットでターコイズウィングについて検索する。
カジュアルな普段使いの物からスーツや靴、小物に至るまで、海外のブランドと提携したりもしているらしく、ショップはオンラインを中心に、全国に実店舗を七軒展開しているようだ。
「メンズアパレルか」
そういえば、凌さんもアパレル関係の仕事をしてると言っていた。
こんな風につい思い出してしまうなんて、痛い女だと自覚はしている。だけどあんな夜を過ごしたっていうのに、連絡先の一つも交換しなかった時点で、あの晩限りと見切りをつけられたんだろう。
(凌さん、イイ男だもんな。大輔の嫁には捨てられたみたいだけど)
いまだにそれが信じられなくてモヤモヤしてしまう。
言いにくいけれど、セックスだって最高に気持ちが良かった。それは認めざるを得ない事実だ。
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