(八)

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 確かに大輔と比べたら違うタイプだし、人それぞれ好みがあるから、フラれることもあるのかも知れないけれど、私からしてみれば、凌さんは大輔なんかとは比べ物にならない。  気を抜くとまたそんなことに執着してしまう自分を叱咤すると、気持ちを切り替えて明日のためのサンプル資料を作成する。  小一時間ほど掛り切りになってキーボードを叩いていると、終業間近になってから取引先の電話対応に追われているうちに定時になった。 「秋菜、もう上がれる?」 「どうかしたの」 「いい店見つけたから、ご飯でもどうかなって」 「いいね。明日の資料もまとめたし、うん。もう上がれるよ」 「よし。じゃあ一緒に出よう」  先に帰り支度を始めた美鳥を追うように、デスク周りを整頓して綺麗に片付けると、社長や他の社員に挨拶を済ませてオフィスを出た。 「ヤバッ、寒い」 「本当に冷えるね」  ぐるぐる巻きにしたストールを掴んで白い息を吐くと、雨が降ってきそうな曇り空を見上げる。 「ここから駅三つなんだけどさ」 「ああ。見つけたっていうお店?」 「ワインが美味しいシーフードーバルなんだけど、ダメじゃなかったよね」 「うん。大好物」 「よしよし。じゃあとりあえず駅まで行こう」  雪でも降りそうだと雑談しながら駅までの道を歩くと、駅前の商店街のアーケードを抜けて、居酒屋を眺めながら鍋も良いよねと話が盛り上がる。  地下鉄で目的の駅に向かうと、美鳥が予約を取っていてくれたおかげで、そこそこ賑わっている店の個室を利用できることになった。
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