(一)

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 これが機嫌のいい時ならば、間違いなく彫刻のような美しいバランスを保っていることだろう。 「これ、飲んでいい?」  私の飲みかけのグラスを手に取ると、答える前に喉を鳴らしてスパークリングワインを一気に飲み干してしまった。 「あの……」 「ん?」 「いや。もしかしてご気分が優れないんですか」 「まあ気分は良くないよね」  前方を睨む目の奥が不快そうに濁っていて、苛立ちが滲んでいるのがよく分かる。  そのうちに、彼の存在に気付いた女性たちが色めき立ち始め、彼と話してる私にも注目が集まってくる。 「えっと、あの」 「チッ」 「え……」  パーティーの主役を見つめながら舌打ちすると、私に苛立ってる訳じゃないと咄嗟に謝った。 「あそこに座ってる連中が気に食わなくてね。パーティーをブチ壊しに来たんだ」 「え⁉︎」  随分と突拍子もない話に驚いて再びギョッとすると、でもね、と彼は私の顔を見た。 「割とどうでも良くなってきたかな」 「そ、そうですか」 「そう。だからさ、アナタも訳アリみたいだし、もう出ない?」 「出るって、パーティーまだ始まったばかりですよ」 「気にしなくて良くない? アナタもあの二人を祝う気持ちじゃないんでしょ」 「いいえ、私は別にそこまでは」 「嘘でしょ。人生終わったって顔してる」 「…………」  初対面の他人にそこまで言われるほど酷い顔をしているのだろうか。  情けなくなって、ステージみたいな一段高い席でみんなに囲まれて、楽しそうな顔をする男女を改めて眺めてみた。 「よく見てみなよ。幸せそうで、気分悪くならない?」 「なんで私、ここに来ちゃったのかな……」 「だよね。なんで来ちゃったんだろうね」  独り言のように吐露した言葉を真似して拾われると、コートを掴んで立ち上がった男性は、そのまま私の手をさりげなく掴む。  そして招待客の相手をする主役の二人にヅカヅカと大股で近付くと、彼に引きずられて私もそのテーブルの前に立たされた。 「よお、腹ボテ花嫁さん」  美貌の男性は、新婦に馴れ馴れしく声を掛ける。
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