(一)

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 それまでお祝いムードだった空気が一変し、突然現れた口の悪い美貌の男性に周りが騒然とする。  呼び掛けられた新婦は彼に見覚えがないのか、突然浴びせられた罵声を受けてわなわなと震えている。  だからだろうか、新婦に代わって新郎の大輔が声を荒げる。 「ちょっと! 突然なんなんですか」 「ああ、そっか。これじゃ分かんないか」  美貌の男性はニヤッと笑ってそう言うと、きっちりセットした髪をガシガシと手櫛で乱し、ポケットから取り出した黒縁メガネを掛けて花嫁に顔を寄せる。 「あ、あんた……」  どこか野暮ったい風貌にマイナーチェンジした男性の姿を見て、ようやく彼の正体に気が付いたのか、新婦が驚きのあまり口をポカンと開けている。  どうやら明らかに面識があるみたいだ。  男性は髪を掻き上げると、美しい相貌を見せ付けるように新婦を見下ろして改めて吐き捨てる。 「金ヅルがそこそこ見られる顔してて、惜しいと思ったか?」 「ひ、人聞きの悪いこと言わないでよ」 「事実だろ。俺に貢がせたプレゼントはもう換金してそうだけど、ご祝儀だと思ってくれてやる。これからは、せいぜい旦那にせびるんだな」  行こうと言って男性は私の手を掴むと、騒ぎ始めた人たちから私を守るように、彼自身の体で私を隠してそそくさと店を出た。  案の定というべきか、その場に取り残された主役二人は、パーティーの参加者に囲まれて大騒ぎになっている。 (なんか分かんないけど、ザマアミロだな)  私自身のフラストレーションが解消した気分になって、ついルンルンしてしまうけれど、この色男のあの言葉は一体どういうことだろう。 「あぁあ、スッキリした」  随分と背が高い男性はようやく私の手を離すと大きく伸びをして、少し待ってねと断りを入れてスマホをポケットから取り出した。  そんな様子を横目に、涼しい空気を吸い込んで深呼吸すると、何気なく隣の男性を観察する。 (イケメンどころか、本当に綺麗な人)  事情は分からないけど、どうやら新婦と因縁があるらしい。  金ヅルなんて物騒な単語が出たけれど、こんな素敵な人より大輔を選んだ理由が分からない。
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