ある老人の一生、そして夢の中の木

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 僕の名前は北岡マサル、ごく普通の男だ。ちなみ年齢は20歳だ。  そんな僕だが、夢の中にいる。景色は白黒、懐かしいようで、怖い景色だ。灰色の空、白い砂原が広がっている。 (…………)  僕はとある大樹を見上げ、眺めていた。まず、この大樹を見るのは初めてではない。この大樹を初めて見たのは、5歳になった頃の誕生日の夜だった。あの時はひょっこり生えた足元サイズの1本の植木だった。その夢を見た後、木の夢を見なくなった。しかし、5年後…………。 ───次に見たのは10歳の頃だった。 「この夢は…………確か小さい頃に見た…………」  ぼんやりとした記憶の中、僕は思い出す。  久しぶりに見た木は、足元サイズから10メートル位に伸びた木となって成長していた。  そして、自分が木に触れた途端、目の前が光に包まれ、夢から覚めた…………。それから、謎の木の夢は見なくなった。 ────それから、1、2、3、4、5年後…………。 「またでかく成長したな…………」と、ため息を吐いて見上げて眺める。  久しぶりに見た木は、大きく伸びて成長していた。大きさは2階建てのビル位だ。そして木の枝には鬱々とした緑が生い茂り、りんご?のような果実が実っていた。  ポトッ…………と、りんご?のような果実が地面に落ち、僕はそれを手に取ろうとした時、夢から覚めた…………。  そして、20歳の頃。 ────15歳の頃に見た木は、大樹となって成長していた。太くて、長くて、木の表面はとても不気味で黒々として輝いていた。この夢は、5年の年月が過ぎる度に、見るようになっているらしい。  25歳、30歳、35歳、40歳…………。と、夢の中の木はぐんぐんと成長していき、それは天井から地面を支配するように伸びて成長した。  45歳、木の成長は若干だが、伸びていた。とは言っても、伸びたのは十数メートル程度、それなりにでかい。 「おや、これは?」  俺は辺りをキョロキョロと眺める。木の周りには芝生のような緑が生い茂っていた。灰色の空、そして大樹の下、初めて自然が出来て何故かほっこりしてしまう自分がいる。この年になれば、人生色々とある年頃だ。妻は42歳、息子は25歳、この前に結婚し、娘は20歳になり、就職したところだ。 「この芝生は、まるで子供達だな…………様々な困難を乗り越え、成長する。この大樹のようにな…………」  俺は伸びた大樹を見上げる。そして温かくも冷たくもない風が地面に広がる。  ★★★★★★  それから…………ワシは100歳となっていた。例の木か?それは成長が止まり、代わりと言ってはなんだが、景色は一変。白黒の砂原の景色から、色彩豊かな緑が生い茂り、一帯の森林となっていた。  ワシは大樹に手を差しのべ、言う。 「上手く言えないが…………今までよく頑張って成長したな。ありがとう、お前が成長したおかげで、事故や病気もなく、天命を全う出来たみたいじゃ…………」  そして、北岡マサルは大樹の木の幹に寝そべり、ため息を吐いて瞳を閉じた。
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