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あれから、十分ほど経って戻って来た彼女は、自販機で売られていたスポーツドリンクを気づかれないようにそっと彼の机の上に置いた。
それから、さらに十分ほど経っても彼は、顔を上げなかった。自分の言動に対する羞恥からなのか、冷たい金属のディスクが気持ちよかったのか顔を上げなかった。そんな状態の彼を見ていた彼女は、思わず声をかけた。
「何しているのですか。生意気だと思えわれるかもかもしれませんが、先輩はもう帰るべきです。そんな状態なら、いても邪魔になるだけじゃないですか。あれ、熱はないんですね」
彼女の声と触れられた感覚に反応して思わず彼は、顔を上げた。その表情は驚きに満ちていた。
「熱があった…ら……こない…だろう……」
「まあ…そうなんですけど…体調悪いのも…仕事できてないのも事実じゃないですか」
「…確かに…それは…そう…だな」
「それなら、帰りましょう」
「でも…これだけはやりきりたいんだ」
「それなら、お役に立てるかわかりかねますが、お手伝いします。ただ、その前に、それ飲んできてください」
「ああ、わかったよ」
彼はあまり考えずに、机の上に置かれたペットボトルを持って出て行った。
そして、数分立って彼は机のところに戻ってきた。彼の顔からは、赤みが消えていた。
「これ頼めるか」
と彼女に一つのファイルを渡した。
「はい」
そう言うと二人は隣り合ったそれぞれの席に座り画面を見ながら作業を進めた。
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