先輩

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 二人の後ろにある窓からは、オリオン座が輝いて見えた。そして、窓から見える銀杏の木には一枚も葉っぱが残っていなかった。  「終わりました。先輩の方はどうですか」  「いや、もう少しかかかりそうだ」  「これいつまでにやる仕事なんですか」  「火曜までだ」  「それなら、終わりにして帰りましょう」  「月曜に、出来なかったどうする」  「先輩…月曜休む前提なんですか。今日仕事最後までやるよりも、調子を整えて月曜にやる方が効率いいですし…私も気を遣わなくて済みます」  「なんでお前が気を遣う必要があるんだ」  「先輩…昨日から体調悪そうでしたし…うつしてしまったかなと思ってて…申し訳ないなって思ってるんです。それに…悪化しているようですし…辛そうにされると…困ります」  「そうだよな…こまる…よな……ただ…俺が体調崩したのは自己責任で…気にするこじゃない……でも…俺が無理してたら…お前も休めないよな……今日はここで切り上げるよ」  「わかりました」  こうして、二人は、月曜日よりも三時間以上も早く仕事を切り上げた。  月曜日の彼女と同様に、彼もビルを出ると、気が抜けたのか思わず一度座り込んでしまった。彼女は、少し動揺しながらも少ししゃがんで彼と目線を合わせた。  「先輩、ここでは邪魔になってしまうので立てそうでしたら、肩貸すので移動しませんか。先輩、今日は車で来てないですよね……」  「来てない……確かにな……でも肩を借りるほどじゃない……」 と言うと彼は力なく立ち上がった。  「先輩…それなら一緒に帰りましょう」  「それは……ダメだろう」  「でも……こんな状態の先輩おいて帰るなんてできないですよ」  「いや……それはだめだ。絶対だめだ」  「そうですよね……私なんていても役に立たないですよね…」  「そんなことは言ってない…だろ」  それから、二人はタクシーに乗って彼の住むアパートまで向かった。  その様子は、数名の社員に目撃されていた。そしてその中で一人は、自分の気持ちを誤魔化すように改札口へと走って行った。
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