8人が本棚に入れています
本棚に追加
二人の後ろにある窓からは、オリオン座が輝いて見えた。そして、窓から見える銀杏の木には一枚も葉っぱが残っていなかった。
「終わりました。先輩の方はどうですか」
「いや、もう少しかかかりそうだ」
「これいつまでにやる仕事なんですか」
「火曜までだ」
「それなら、終わりにして帰りましょう」
「月曜に、出来なかったどうする」
「先輩…月曜休む前提なんですか。今日仕事最後までやるよりも、調子を整えて月曜にやる方が効率いいですし…私も気を遣わなくて済みます」
「なんでお前が気を遣う必要があるんだ」
「先輩…昨日から体調悪そうでしたし…うつしてしまったかなと思ってて…申し訳ないなって思ってるんです。それに…悪化しているようですし…辛そうにされると…困ります」
「そうだよな…こまる…よな……ただ…俺が体調崩したのは自己責任で…気にするこじゃない……でも…俺が無理してたら…お前も休めないよな……今日はここで切り上げるよ」
「わかりました」
こうして、二人は、月曜日よりも三時間以上も早く仕事を切り上げた。
月曜日の彼女と同様に、彼もビルを出ると、気が抜けたのか思わず一度座り込んでしまった。彼女は、少し動揺しながらも少ししゃがんで彼と目線を合わせた。
「先輩、ここでは邪魔になってしまうので立てそうでしたら、肩貸すので移動しませんか。先輩、今日は車で来てないですよね……」
「来てない……確かにな……でも肩を借りるほどじゃない……」
と言うと彼は力なく立ち上がった。
「先輩…それなら一緒に帰りましょう」
「それは……ダメだろう」
「でも……こんな状態の先輩おいて帰るなんてできないですよ」
「いや……それはだめだ。絶対だめだ」
「そうですよね……私なんていても役に立たないですよね…」
「そんなことは言ってない…だろ」
それから、二人はタクシーに乗って彼の住むアパートまで向かった。
その様子は、数名の社員に目撃されていた。そしてその中で一人は、自分の気持ちを誤魔化すように改札口へと走って行った。
最初のコメントを投稿しよう!