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週が明けて月曜日を迎えた。暖色系の照明に照らされた化粧室で、今日も数人の女性社員が噂話をしていた。
「私……やっぱり…失恋したかもしれない…」
「え…まだ諦めてなかったの」
「そもそもさ…前に弁当渡したら…彼女いるからって断られたんじゃ…なかった」
「彼女じゃなくて好きな人。それにさ……先輩…彼女と別れたって去年噂になってたし…可能性あるかなって思って期待してたんだけどな」
「まぁ……夢見るのは自由だけどさ」
「確かに。あの先輩いいよね。彼氏いなかったら好きになってたかも…」
「じゃあ…どうして失恋したと思ったの」
「負けちゃった。新人のあの子に」
「それって、先輩が今付きっきりになってる子」
「そう…」
「あんたの方があの子より先輩と話してるじゃない。なにも負けてるところないと思うけど」
「そんなことない。私じゃあの子に勝てるところ何もない…よ」
「そんなことないでしょ」
「そうそう。どうしてそう思ったのよ」
「木曜日…珍しく先輩……マスクつけて出社したから体調悪いのかなって思って聞いたら……ただの予防だって言うし…その後は普通に元気そうだったから…気にしてなかった…でも…あの子はそれを信じないでずっと心配してて…結局…金曜日……二人で同じタクシーに乗ってた…それに…なんか二人は前よりも距離近くなった気がするし…」
「それ。そういえばこっちでも話題になってた。二人が一緒にタクシー乗り込んでたってやつ」
「でも…さ。気にしすぎなんじゃない。あの子さ…火曜、水曜と体調不良で休んでたじゃん。だから隣の先輩にうつしてしまったかもって言うのがあったからだと思うよ」
「そうそう。そうじゃなかったら…あの子絶対気づかないよ」
「あんたより、周りに気を配れる人知らないもん」
「そういうことじゃないんだよ。私の好きだった人の好きな人かもしれない人を下げてまで、励まされても嬉しくないよ。でも…気を遣ってくれたんだよね、ありがとう」
と彼女は、仕事に戻った。
「ありゃ…苦労するかもね」
「でもさ、あれだけ真っ直ぐならいつかは良い人も現れるでしょ」
「それもそっか」
「ねえ…もう五十分じゃん。もうお昼休み終わっちゃうよ」
「そうだね」
それから、彼女たちは、ポーチの中に化粧品をしまった。
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