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あれから、しばらく経って二人は、着いた。それから、間もなくしてきた電車に乗った。休日の深夜であるからか、電車にはほとんど人が乗っていなかった。二人は、一つ空けて隣に座ると、ようやく口を開いた。
「「あの…」」
二人の声は、重なった。そして、何回か譲り合ったのちに、彼から話し始めた。
「あのさ、どうして俺についてきたの」
「ついてきたわけじゃないです。ご存知のことだと思いますが、家の方向は同じなだけです。でも、先輩こそ二次会行かなくてよかったんですか」
「まあ、実際、明日は出張だからな」
「そうだとしても、最初は参加するって言ってたじゃないですか。私が参加しないって言うまで言っていたじゃないですか。お世話になった人の送迎会だからって」
「確かに部長にも、先輩にもお世話になったけどさ。あの時、参加しないって言ったのお前だけだったじゃないか。それだとお前が何か言われるんじゃないかと思って」
「いいんですよ。悪口言われるの慣れてますし、わかっています。こんな私だから、嫌われても仕方ないことだと分かっています。たとえ、空気が読めなかったとしても、何か悪いことをしてるわけないはずです。文句言うやつなんて気にしません。だから、そんな無理に私に合わせなくてよかったんです。それに、出張があるから帰るというのに、遠回りして帰るなんて先輩変ですよ。絶対、不自然ですよ」
「そんなこと慣れちゃダメだろう。それにしても珍しいな。お前がこんなに話すなんて。もうあと一駅で着くだろう。明日までには酔い覚ませよ」
「大丈夫ですよ。先輩も気をつけてくださいよ」
「俺は、アルコール口にしてないからな。気づいてなかったのか」
「なんでそんなこと把握してないといけないんですか」
「そうだな。確かにお前が把握してる必要はないよな」
「そうですよね」
そう言うと扉が開いて彼女は電車を降りた。
電車の中には、寂しそうなかわいた笑い声が、響いていた。
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