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彼女は、先週とは違う表情で、実家に帰った。
メールを入れたはずなのに、家には、誰もいないように思えた。一方的に送っただけだから、もしかしたら出かけているのかもしれないと諦めた。
彼女は、誰もいないリビングに入ると置手紙を残し、自室に入った。
部屋に入ってみると、実家を出てから何年も掃除をしてないはずなのに、くもの巣一つなかった。その様子から、まめに掃除をしてくれていたことに気がついた。それは、彼女の考えを肯定する証拠の一つだった。
だから、彼女はスマートフォンに電源を入れ、電話をかけた。もう、こわくなくなっていた。きっと特別な事情がなければ出てくれるという自信があった。すると、近くから懐かしい着信音が聞こえてきた。彼女は、部屋の扉を開けると、会いたかった人たちがいた。
何年も話してこなかった彼女は、聞きたかったことよりも、話したいことが次々に出てきた。
彼女は、初めて家族を実感した。彼女にとってそれはとても大事なことだった。彼女は、もう聞くまでもなくわかった。
だから、あの先輩からのメッセージを見ることも、あの先輩に会いに行くことも怖くなくなっていた。
家族でディナーに出かける前に先輩から、荷物を受け取り彼の家の玄関まで届けた。
彼女は、中身も、なぜ自分に頼んだのか分からなかったが、あえて聞かなかった。今の彼女にとってそれは、どうでもいいことだった。
彼女は、その帰りに駅前の花屋に寄った。そして、花束を購入して急いで家へ戻った。
彼女は、そこでもう会えないとあの少年と再会を果たした。
彼女と少年は、いとこ同士であった。家族関係が希薄になってしまった彼女は、その存在を知らなかった。
その少年は、朝とは違って笑顔できょうだいと話していた。そのことが彼女にとって、何よりうれしかった。
そして、彼女の叔母にあたる少年の母から、彼女は少年の遊び相手になってほしいと頼まれた。それが、彼女にとってはとても嬉しいことだった。一人っ子で一人ぼっちだった彼女には、年の離れた弟たちができたようなものだった。
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