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彼女は、両親との会話を終えると部屋に戻った。
今まで気にならなかったはずなのに、三つ写真立てのことが目に着いた。そして寝かせていた写真立てを立て直した。
彼女は、その写真を見ても悲しくなることもなかった。伏せてしまったあの日と違ってもう、悲しさも辛さも感じていなかった。
その写真を見ると楽しかった記憶が昨日のように蘇ってきた。どの写真も海に出かけた楽しい瞬間を切り取ったものだった。
彼女は、スマートフォンに電源を入れるとその写真を撮影した。それは、忘れたくない大切な記憶だから。彼女は写真に収めた。
彼女にとって楽しいことは、辛さを際立たせるものから、緩和してくれるものに変化していた証であった。
そして、彼女は、暖房の効いた暖かい部屋で、ふかふかのベットに座って、彼に電話を掛けた。
彼女が、今話を聞いてほしかったのが、声を聞きたいのが、彼だった。親の次にくらいには大切な存在になっていた。
彼女は電話を掛けた。出てくれないかもしれない。嫌われてしまったかもしれない。昨日まで感じていた不安もなくなっていた。昨日のメールの返信もまだ来てないのに、出てくれるって信じていた。そして彼なら受け入れてくれると信じていた。今まで過ごした時間がそうだと思わせた。
彼には、嘘のない自分を知ってほしい、そして受け入れてほしいと思っていた。深夜だし、出てくれないかもしれない。それでも、掛けずにはいられなかった。
それに、彼女は、もし繋がらなければ、明日連絡すればいいと思えていた。彼が自分のことを大事にしてくれていたこと。彼以外にも、多くの人が支えてくれていること。そのことを知ったから、こわくなくなっていた。不安は感じていなかった。
彼女の心臓はいつもより少し早く動いていた。それでも、彼女は、その鼓動が苦しくはなかった。
しかし、彼女は、これを恋だとは思っていなかった。何なら、ついさっきまで子どもだった彼女は、まだ恋を知らなかった。
あたたかい彼女の部屋の窓には、輝く二つの星の光が映っていた。
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第ニ章 終
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