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冷たい夜風によって、桜の花びらが街灯に照らされながら落ちていく。そのきれいな景色にも、気づかないでしゃべり続ける三人がいる。それだけ、社会人である三人にとっては大事なことだった。たとえ、くだらないことだとしても、かけがえのない時間だった。
「っていうかさ。一番あの子の興味なかったやつが手にするって実際にもある話なんだな」
「手になんかしてないだろう」
「そんなことないだろ。俺らは、きっと存在すら覚えられてないし。あの子はお前を追いかけてきたんだろう」
「そうじゃないだろ。ただの偶然だ」
「偶然って言うか。もはや運命だろ」
「そんなわけないだろ。俺は、ああいうやつはどう扱っていいかわからないから苦手なんだ」
「そうか。案外お似合いだと思うけど。二人とも塩対応だし」
「そうだよな。悔しいけど、そうなんだよ。なんか似てるよな」
「なに勝手に決めつけているんだよ。失礼だろ。あの子に」
「そういうとことだよな」
「どういうとこだよ」
「わざわざ駅まで送らなくてもいいのにさ。こうして送ってくるところとかさ」
「きっと、あの子は送らないだろ」
「どうだろうね。だってお前だって、送らなそうに見えたよな」
「そうそう。初めて会った時は、送らない人だと思ったよ」
「他人に興味なさそうだったよな」
「そうそう。それに、あの新歓時もあの子とお前だけは真っ先に帰ったよな」
三人は、あの日のことを思い浮かべた。
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