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ラブホ。
チンピラとその彼女に手配された部屋にふたり。
ふたりになるなり、「なんで騙した!あいつら、ヤクザじゃないか。途中寄ったとこでジャブ食ってたじゃないか。」
「わたしだって、知らなかったもん」
最初シラを切った。
「僕はヤクザだったら行かない、君はヤクザじゃない、そう言った筈だ。そうじゃなかったの?」
「だって、ハルちゃんと一緒に居たいんだよ。うちの親、馬の骨だとか、家柄が悪いとか。」
「ね?」
僕はこの彼女の、瞳を潤ませた懇願に、それから10年抗えなかった。
あのコと出逢うまで。
それから目的地に着いて、スナックの2階のねぐらに案内され、彼女が下のスナックで働く為の服を買いに出掛けた。
Tシャツにジーンズ、茶髪の僕は床屋でパーマをあてられKENZOのビートたけしが着てるみたいなセーターをあてがわれた。
僕は建設現場のピンハネ要員となり、昼夜隔てられた間に彼女とチンピラは関係していた。
夜中に飛び出し、狂った様に看板を殴りつけ、血まみれで帰る毎日。
その時はまだ、こんな酷い事はもうないなんて、甘い夢の中に居た。
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