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バンドはうまく行かなかった。
なかなかメンバーが固定しない。
家で思うようにギター弾いたり曲作ったりも出来ない。
あきの家には色んな決まり事があって、貧乏で野放図な家庭に育った僕には窮屈だったけと、子供の陰に隠れてやり過ごした。
飲みたくない酒。
けれども、悪気はない。
緊張して飲む酒は、頭に身体に効いた。
夕食の席に着く度、ぐらんぐらんと皆が遠くに見えて、そこに注がれる空きっ腹のビール。
僕の言葉に場が凍る。
あれ?何言ったんだっけ?
いちばん遠くにあきの顔。
休日、電車。
長男を抱き、前面展望をと先頭車両に陣取る。
どこまでも行くってのはどうだ?
このまま電車でよ
知らない遠くの方だ
とりあえず電車でよ
どこが良いのか考えてない
どこでも良いならうまくいく
あきのおなかに第二子
僕ら、電車でおでかけ。
瀬戸内、広島。
ラストイヤーの市民球場。
宮島のロープウェーに穴子飯。
場末のお好み焼き屋で食べた小鰯。
楽しかった。
帰りたく、なかった。
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