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fight fight fight
毎日ぎこちない。
「ただいま帰りました」
会社みたいな「家」。
あきは夜泣きに悩まされ、深夜にDVDを最大音量で流したりした。
僕も抱いてめちゃめちゃに揺すったり、一緒になって狂乱した。
そんな状態は、多少の慣れはあれど、その後も長く続いた。
僕はあきの瞬発的な攻撃性と、それをすっかり忘れたように「かわいい」と眠る子供を眺める振れ幅に恐怖を感じた。
みんな、この家のひとたち、この地方に住むひとたちがそう見えた。
僕ひとり、ただおっとりしたノロマに感じて、塞ぎ込んだ。
すべてが契約みたいに感じた。
僕一人酷く変わっていて、とても一人前じゃない。
その頃バンドもうまく行かなかった。
お義母さんにそれとなく言われて、借金を整理した。
結構な金が戻り、経済的に楽になった。
しかし僕はどうにかして返済するつもりでいたから、あきがこっそり相談したんじゃないかと疑った。
疑心暗鬼だった。
けれど、この頃の軋轢が、僕と社会との関係性を決定付けてしまい、僕は一生それを変える事が出来なかった。
僕はあきや子供を盾にして、不完全な自分を人間みたいに見せる事しか出来なかった。
もはや人格などない。
ただの人形。
それまでの自堕落な半生を悔いても仕方ない。
僕は失敗した。
悪あがきに、現実逃避を持ち出す様になっていた。
もしかしたら、僕じゃなくて社会がおかしい部分もあるのかもしれない。
悲しい一縷の望み。
あきに、わかって欲しかった。
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