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弁当貰って行くぜ!
どれぐらい時間が経ったのか、俺が生徒会室の隣にある部屋にあった机に座り、何枚か渡されたテストと睨めっこを始めてから結構経った気がするが。
ダメだ。一問も分からねぇ。ペーパーテストを受けてやるって意気込んだけど、元々勉強なんかしてねぇし、分かる訳がない。
でもちゃんと受けたし弁当はもらえるよな?
俺の目の前にいる生徒会長をチラッと見ると目が合った。
「どうした?制限時間はあと少しだぞ」
「うっ……分かってる!」
テストが始まってからずっと俺の事を見てるけど、それも居心地悪いんだよなぁ。
あーあ、普通のテストとかだったら寝てれば終わるのに目の前に居られちゃなぁ。
「そこまで。筆記用具を机に置け」
「あ、終わり?はぁ、肩凝ったぜー」
「貴ちゃんお疲れ様~!あっちでお弁当食べよー♡」
「その前に結果を発表する」
「えっもう?まだテスト回収してないじゃん」
銀髪が驚くのも、生徒会長は俺の目の前から動かず、テストにも触ってすらいない。
どうやって結果を出すんだ?
「回収するまでもない。全教科白紙だからな。それどころか名前すら記入していない」
「まじぃ?」
「それと、態度も問題だ。集中力が無さ過ぎる。途中で諦める様子もあった。全くやる気が見受けられん!よって判定は最低のEだ!」
「E?」
「うわー、俺でもCだったのに貴ちゃんヤバーい」
「お、おい何だよEって!」
「秋山貴哉の現時点での評価だ。今後はそれに見合った特別授業を受けてもらうぞ。詳細は追って連絡する。話は以上だ。とっとと弁当を食べて教室に戻れ」
「はぁ!?特別授業ってなんだ!?テスト受けたら終わりじゃねぇのかよ!」
「まぁまぁ、貴ちゃん落ち着いて♪そうだ、連絡先教えてよ。今後必要だと思うから」
生徒会長はさっさと部屋から出て行ってしまった。銀髪は相変わらずの様子でスマホを出して呑気にしている。
いきなりあんな事を言われて訳が分からずにいると、弁当を差し出された。
「貴ちゃん、葵くんってあんなんだけど、言う事聞いておけば本当に何とかなっちゃうから心配しないでよ。それよりもお弁当食べようぜ~」
「特別授業って何すんだよ?」
「さぁ、ランクによって違うみたいだけど、Eは何をするんだろうね。あ!そう言えば!」
「?」
銀髪が何かを思い出したように窓の方に駆け寄った。
「貴ちゃんがテスト受けてる間に空くん見つけたんだよ。ほら、中庭で誰かと話してる」
「早川?」
早川とはあのままだから、今どこにいるか知らなかったけど、中庭にいたのか。
俺も窓に近付いて銀髪が指差す方を見てみると、確かに早川がベンチに座って誰かと話してた。クラスの奴じゃねぇみたいだ。
「え、ちょっと距離近くない?」
「…………」
「わー!もっと近付いた!チューしてる!」
「チューだとぉ!?それって浮気じゃねぇか!」
確かに早川から顔を近付けているように見える。ふと込み上げてくる怒りの感情。
俺は窓に足を掛けて身を乗り出した。
「まさかここから飛び降りる気か!?」
「おう!銀髪!弁当貰って行くぜ!」
「あ!貴ちゃん!」
ここは二階だ。飛び降りられなくはない。しっかり弁当を二個持って窓から早川の後ろめがけて飛び降りる。
無事に着地に成功してすぐに早川と浮気相手を睨むと、驚いた顔してた。
「おいてめぇら!何してんだ!ああ!?」
「た、貴哉?お前こそ何してるんだよ!まさか飛び降りて来たのか!?」
「そうだ!てめぇらが浮気してたからぶん殴りに来たんだ!」
「浮気?ただ話してただけだって!」
「嘘つけ!さっきキスしてただろ!」
「キス?田中と俺が?」
「あのー、空の彼氏さん?多分それ勘違い。俺の目にゴミが入って痛かったから見てもらってただけっす」
「はぁ!?」
浮気相手がそう言うと、隣で激しく頷く早川。
目にゴミだぁ?だって、銀髪がチューしてるって!
慌てて飛び降りて来た窓を見ると既に銀髪は居なかった。あのヤロー!嘘つきやがったな!これじゃあ俺がただの恥ずかしい勘違い野郎じゃねぇか!
「貴哉ぁ♡俺と田中が浮気してると思って飛び降りて来てくれたの?」
「うるせぇ!紛らわしい事してんじゃねぇよ!お前も痛かったら洗え!そしてちゃんと保健室行け!くそが!」
「ご、ごめんなさい」
「貴哉♡俺嬉しいよー♡浮気なんてしないから安心してー♡」
「ぶわっ抱き付くな!あ!弁当!」
はしゃぐ早川に抱き付かれて恥ずかしさが増した。そうだ、高級焼肉弁当貰ったんだ!
「あのさ早川、さっきは言い過ぎたよ!これ一緒に食って仲直りしようぜ!」
「もー!貴哉大好き♡」
「分かったから離れろ!」
すげぇ恥かいたけど、早川とも仲直り出来たし、弁当ももらえたしいいか!あとは生徒会長からの連絡待ちだな。
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