早川、もっと笑え

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早川、もっと笑え

 仲直りした早川との帰り道に、今日の出来事を話すとまだ心配そうだったが理解してくれたみたいだった。  自転車を転がしながら隣に並んで歩く早川。俺も不安はある。まだ得体の知れない生徒会と、憎たらしい銀髪の事だ。大丈夫だとは言っていたが、本当に何とかしてくれるのかは分からない。 「まぁ俺じゃ力になれないから今はそっちに頼るしかないよな。生徒会長って確かに周りからの信頼はあるから、そこは安心かな。問題は一条さんだよな」 「銀髪って悪い奴なのか?」 「良い噂は聞かない。授業も出ないし、不真面目だし、でも生徒会長と仲良いから退学とかにはならないらしい」 「ズル!ん?て事は俺も生徒会長と仲良くなればいいのか?」 「それは分からないけど」 「でもあの生徒会長と仲良くなるとか無理だな。鉄仮面と話してるみてーだったもん」 「ああ、戸塚?そう言えば戸塚の噂も聞いたな。何かこの前の休みにすげぇ美人と歩いてたって」 「マジで?あの鉄仮面が?」  それは驚いた。てか戸塚は男が好きじゃなかったのか?直登の事は完全に吹っ切れたのか。 「ビックリだよな~。今度本人に聞いてみようと思うんだ」 「お前達には関係ない。とか言いそう」 「あはは!それ戸塚の真似か?ウケるー」  ケラケラ笑う早川。あれ、何か俺ホッとしてる?いつもなら笑ってんじゃねぇとか言わなきゃいけねぇのに、何だろ、早川のアホみたいな笑顔を見たら…… 「どうしたんだ?ジッと人の顔見て」 「早川、もっと笑え」 「はぁ?何それ」 「早川の笑った顔が見たいんだ」 「あは、貴哉ってば変なのー」  今度は困ったように笑った。あ、分かった。早川の笑顔見ると嬉しいんだ俺。心があったかくなって、自然と俺も笑顔になれる。これも好きの一つなのか。 「早川と居るといろんな事が分かっておもしれぇよ」 「そ?俺も貴哉と居るの好き。これからもずっと一緒にいようぜ」 「おう。居てやるよ」 「めっちゃ上から!」 「嫌なのか?」 「もう慣れた。逆に貴哉が下から来たら嫌かも」 「空」 「何ー?…………え!?今何て!?」 「名前呼んだだけだ」 「嘘!めっちゃ嬉しいんだけど!いや、ずっと思ってたんだよね♡そろそろ下の名前で呼んでくれねぇかなって♡」 「早く言えよ。何かみんなが呼んでるから俺も呼んでみたくなったんだ」 「もっと呼んでー♡」 「早川」 「何で!?」 「あー、やっぱ早川の方がしっくりくるな」 「何だよもぉ、嬉しかったのにー」  しょんぼりする早川が面白くてからかいたくなる。付き合い出してから言い返してくる事が減った気がするけど、これはこれでいいかもな。  たまに空って呼んでやろーっと。
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