秋山は喧嘩強いだろう?

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秋山は喧嘩強いだろう?

 帰り道、一人になったところで戸塚に電話してみる。戸塚の用事が終わってればこのまま寄ってけばいい。するとすぐに電話に出て、今いる場所を言うとすぐに行くと言われた。  あの豪邸に行く気満々だったけど、来てくれるなら待つか。  すぐに来るつってたからその辺の道端に突っ立ってたんだけど、ここで早川から電話が来た。 「おう、どうした早川?」 『部活終わったかなぁって、どうだった?』 「クソめんどくさかった」 『はは、心配してたんだぞ。声聞いてちょっと安心した』  何だろ、早川と久しぶりに会話する気がする。今日会ったのに。俺も声が聞けて少しホッとしていた。 「早川は家か?」 『いや、ちょっと出てるけど、何?会いたくなった?』 「黙れ。俺はこれから戸塚と会うんだよ」 『あー、言ってたな。戸塚の事だから真面目な話なんだろうけど、気になるよな。朝の女の子の事だろ?』 「そう言ってたぜ。あの戸塚がこの俺に頼むぐらいだからな、切羽詰まってんだろ。ちょっと面白いよな」 『まぁ真剣に聞いてあげなよ。俺も協力出来たらするから』 「心強いな。あ、戸塚来たみたいだからまた連絡するわ」  マジですぐに来たな。てか高級車の後ろから降りて来たけど、俺の知ってる戸塚だよな?確かにあいつんちは金持ちなの知ってっけど、ドラマの世界かよ。  そして何と戸塚の後ろからあの女まで出て来た。まじで戸塚とどういう関係なんだ? 「悪いな秋山」 「いや、平気だけど」 「とりあえずあそこのカフェに入ろう。そこで話す」  あれ?これ本当に戸塚か?私服だからって訳じゃねぇだろうけど、なんかいつもより柔らかい感じ?いつもの俺に対しての威圧感がねぇ。  戸塚が指差したとこにあるカフェに三人で入る。  絶対俺一人じゃ入らねぇ店だ。 「秋山、好きな物頼んでいい。ここは俺が出す」 「そ?じゃ何か食っていい?腹減った」 「好きにしろ」 「私はアイスティーストレートとケーキを頂くわ」 「芽依はチーズケーキだな」 「俺オムライス。とアイスコーヒーな」 「分かった」  戸塚は慣れたように店員を呼び注文していった。  さてさっさと話聞くとするか。 「で、話って何?」 「率直に聞く。秋山は喧嘩強いだろう?」 「あ?弱くはねぇよ」 「なら大丈夫だろう」 「ねぇ春樹、ちゃんと紹介して欲しいわ。朝の不良よねこの人」  戸塚の隣に座る女は俺を見て言った。黒髪ロングの前髪パッツン。それが良く似合う少しキツい目付きにスッと通った鼻筋。女に興味はねぇけど俺から見ても美人だ。 「クラスメイトの秋山だ。そしてこっちは……」 「一条芽依よ。春樹とは従兄妹」 「一条?どっかで聞いたような」 「紘夢の事?貴方、アイツと知り合いなの?」 「いや、二年にいるってだけだけど、もしかして」 「紘夢は私の兄よ。認めたくないけどね」 「まじかよ!て事は戸塚と……?」 「ああ、紘夢くんは俺の従兄弟だ」  何て繋がりだ!まさかあの銀髪と戸塚が従兄弟だったなんて!いや、戸塚と芽依って女ならタイプも似てなくはないが、銀髪だけ似てなくね?妹に好かれてねぇみたいだし。 「紘夢の話なんてどうでもいいのよ。春樹、そろそろ本題に入って」 「ああ」  ここで注文していた飲み物が届いた。それからすぐにケーキとオムライスも。戸塚はホットコーヒーだけだった。   「秋山、芽依の彼氏の振りをしてくれないか?」 「あ?」 「実は芽依には悪質なストーカーがいるんだ。今は俺が登下校一緒に過ごしているんだが、どうにも限界があってな。何故だか芽依と親戚だと言う事も相手にバレているらしい。だから秋山に協力して欲しいんだ」 「ちょ、それ俺じゃなくても良くね?何なら早川とかの方が彼氏っぽいじゃん。てかストーカーって流行ってんのか?さっきもそのワード聞いたぞ」 「いや、相手が厄介なんだ。早川では太刀打ち出来んだろう。ストーカーに流行りも何もないだろう」 「ストーカー野郎は光陽の奴なの。つまり馬鹿で話の通じない奴」 「へー、でも喧嘩なら直登の方がいいんじゃね?壁ぶっ壊したんだろ」 「直登は力は強くても喧嘩慣れしていない。何よりも直登に危険な事はさせられないだろう」 「俺には危険な事させるのかよ」 「秋山は慣れっこだろ?」  戸塚はフッと笑って言った。三人の中じゃ俺が一番適任って訳か。まぁいいや。戸塚に恩を売っておくのも悪くねぇ。 「分かった。協力してやる。てか光陽なら知り合いいるけど、そいつの名前なんつーの?」 「荻野よ。荻野拓」 「荻野は知らねーな。光陽の奴に聞いてみるわ」  ふと光陽高校と聞いて楓が浮かんだ。楓に何か知ってるか聞いてみるか。  その後はオムライスを食いながらこれからどう行動するか三人で話し合った。
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