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さよなら先輩
朝、早川と歩きながら学校へ向かう。何か早川とは毎日会ってるのに久しぶりに会う気がするな。
「貴哉大丈夫か?部活もだけど、戸塚の事もさ」
「ああ、寝る前に楓と話したんだ。そしたら協力してくれる事になったんだ。楓が居りゃ何とかなるかもな」
「楓ってこないだ会ったやつだろ?また貴哉を好きになったりしねぇよな?」
「ねぇだろ。楓も付き合ってる奴いるって言ってたし」
「可能性無くはないだろ?俺も行きたい!」
「やっぱり言うと思った。早川が来たらまたややこしい事になるだろ。今回は大人しくしててくれ」
「だって……芽依ちゃんの彼氏の振りするってのもちょっと嫌なのに、告られた奴と俺の居ない所で会うなんて……」
早川の言いたい事は分かる。だけど今は俺を信じて欲しい。どうしたらもっと信じてもらえるんだ?うーん……
「空」
「え」
「俺は空だけだ。空以外になんて興味ねぇよ。とりあえず落ち着いたら二人でのんびりデートでもしようぜ」
「貴哉ぁ♡大好きー♡」
早川は両手に自転車のハンドル持ってるから、目一杯体を寄せてアピールして来た。自転車無かったら抱き付かれてたなコレ。
早川の為にもさっさと終わらせないとなー。
「そうだ、朝行くとこあるんだ」
「どこ?」
「第二会議室」
「何でそんなとこに?」
「クラスメイト迎えに行くんだよ」
「昨日言ってた広瀬ってやつか」
もう一つの問題の広瀬だ。あいつを引っ張ってでも教室に連れて行くつもりだ。桐原の情報だと広瀬は人気の少ない朝一で学校に来てるらしいからな。
広瀬の方は早川も連れてって大丈夫だろう。早川に広瀬の事はメッセージで簡単にしか言ってないからここで詳しく話しておいた。もう一人のクラスメイトだって事と、対人恐怖症だって事。そして俺がクリアしなければいけない事も。
「広瀬の問題なら俺も協力出来そうだな」
「頼りにしてるぜ彼氏ー」
「でも同じクラスにそんな奴がいたなんてな。どんな奴だろー」
「見た目はヤベーよ。ピアスがすげぇ」
「悪い見た目なのか!」
「良くはねぇな。目付きもこんなんでキッて睨んでくるぜ」
「あはは、貴哉よりヤベーのなんているんだな」
俺なりに広瀬の真似をして指で目を細めて見せてやると早川は笑って頬を触って来た。そして早川は何かを思い出したような顔をした。
「あ」
「ん?」
「貴哉とチューしたい」
「なっ!いきなりだな!」
「ねー、しちゃおうよ♡一瞬だけなら大丈夫だよ♡」
「馬鹿かお前!こんなとこで出来る訳ねぇだろ!」
「貴哉となら出来る!」
このままじゃマジでされそうだから早川から少し距離を置いて歩いていると、学校の門の所に人集りが出来てるのに気付いた。
もしかして持ち物検査でもやってんのか?たまにやるんだよなこの学校。俺の鞄には何も入ってねぇからいいけど。
近付いて行くと、人集りの中心にいた人物がこちらに気付いて手を振って来た。
「貴哉ー!おはよー♪」
「……!」
まさかの桐原だった。アイツ!昨日あんなけ早川の前では他人の振りしろって言ったのに、それもこんな大勢の人前で堂々と声掛けてきやがって!
もちろんシカトした。
「って貴哉ぁ?待てよー」
「おはようございます先輩。さよなら先輩」
目一杯のあっち行けスマイルで言ってさっさと早川の自転車置き場まで向かう。
もちろんこんなので早川を誤魔化せる訳でもなく……早川は不機嫌そうだった。
「貴哉、今の人って二年の桐原さんだよな?」
「さぁ?そう言えば部活にいた気がするなー?」
「桐原さん、貴哉の事名前で呼んでたぞ」
「昨日もみんなの事名前で呼んでたぞ?」
「うわーん!俺の貴哉なのにー!」
「早川落ち着け!ちゃんと話すから!」
こうなるんだったら昨日話しておけば良かったぜ……
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