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彼氏と喧嘩してぼっちなんだろ?
「何でお前がいんだよ?」
広瀬を連れて廊下に出ると、桐原がニッコリ笑って立っていた。ふと朝の出来事が頭をよぎる。
「てめぇ!何話しかけてんだ!おかげで早川と喧嘩しちまったじゃねぇか!」
「あ、やっぱりあれが彼氏なのかー。挨拶したかったんだけど残念だなぁ」
「何が挨拶だ!あれだけ言ったのに!」
「まぁまぁ、それはともかく。おめでとう♪」
「あ?」
「広瀬の事だよ。まさか初回から成功するとは思わなかったから本当に驚いた」
桐原に言われてチラッと広瀬を見ると、ササっと俺の後ろに隠れた。
「みんな病気だの何だの大袈裟なんだよ。話してみたら広瀬は普通じゃねぇか。特別扱いなんかするから余計に殻から出られねぇだけじゃん」
「あのな、普通の風邪とかの病気と違うんだぞ。って今は貴哉には頭上がらないか。広瀬の心を開くの俺でも無理だったもんな」
「ハッ!てめぇなんかに負けるかよ。行くぞ広瀬」
早く教室に行きたくてさっさと歩いて行こうとすると、広瀬がピッタリ後をついて来た。親鳥の後をついて行くヒヨコみたいだな。
そして当たり前かのように桐原もついて来た。
「なぁ貴哉、彼氏とは付き合ってどれぐらいなんだ?」
「誰が教えるかよ」
「じゃあどっちから?」
「うるせぇなぁ!今急いでんだよ!ってうわ!」
あまりのしつこさに一発殴ってやろうと思い切り振り返ると、思ったより近くに居た桐原にぶつかってしまった。
そして自然な流れで桐原は俺を抱き抱えた……
「て、めぇ!何してんだ!」
「貴哉が飛び込んで来たんだろ♡可愛いなーもう」
「離せ!広瀬!助けろ!」
「っ……でもっ」
「広瀬は俺の味方だよなー?なぁ貴哉、今日一緒にお昼しよ?」
「誰がするか!」
「いいじゃん。彼氏と喧嘩してぼっちなんだろ?」
「ぼっちじゃねぇ!広瀬がいる!」
「秋山っ」
俺が桐原に捕まってもがいてると、広瀬が入って来てくれた。これには桐原も驚いたみたいでパッと俺から離れた。
「桐原さんっごめんなさい!秋山と俺、教室に行かなくちゃだから……」
「ふーん。広瀬が言うなら仕方ないか」
「サンキュー広瀬♪よし!走るぞ!」
桐原から逃れた俺達は走って階段を駆け上がり、教室に飛び込んだ。
すると、既に中にいた奴らが一斉にこちらを見て来た。やべ、広瀬が……
「広瀬!」
「……はぁはぁ」
慌てて広瀬を見ると、走ってなのかこの状況になのか分からないが、とにかく息を荒くしてうずくまっていた。
これじゃまた第二会議室行きじゃねぇか!
「落ち着け広瀬!俺を見ろ!」
「はぁはぁ、あき、やまっ」
広瀬の肩を掴んで落ち着かせようとするけど、既にパニックになってるっぽかった。
こんな時どうしたらいいんだよ!どうにかして落ち着かせねぇと……落ち着かせる?俺が落ち着くって言ったらどんな時だ?
「……あ」
「……はぁはぁ」
とにかく今は思い付いた事をやるしかねぇ!俺はガタガタ震える広瀬を思い切り抱き締めてやった。
「広瀬っ大丈夫だ!俺がいる!」
「っ秋山……」
広瀬も俺にしがみついて必死に堪えようとしていた。頑張れ!今は落ち着くのを待つしかねぇ。
俺が思いついたのは温もりだった。ガキの頃とか親に抱き締められると温かくて安心出来たのを覚えてる。だからってそれが効果あるかは分からなかったけど、今の俺にはそれしか出来なかったんだ。
「ちょ、貴哉?大丈夫?」
一連のやり取りを見ていた直登が近寄って声を掛けてくれた。すると、広瀬の呼吸は更に荒くなった。やっぱり広瀬にはこの人数はまだ早かったのか。
「直登、担任が来たら伝えといてくれ。俺と広瀬が保健室行ったって」
「うん!分かった!」
この場は直登に任せて広瀬の肩を支えながら保健室へ向かった。
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