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ど変態が!興奮するとか言うな!
俺はオニギリを、数馬は弁当を、桐原はカロリーメイトみたいな物をそれぞれ食いながら早川の事と、数馬の事を話していた。
「ふーん。あれから彼氏とは喧嘩したままなんだ」
「お陰様でな」
「それにしても広瀬も良く頑張ったな。いきなりあんな大勢の中によく入れたよ」
「……貴哉がいるから」
「すっかり懐いたなー!ボラ部の奴らでもここまで親しくなった奴いねぇぞ」
「てめぇらがボンクラなだけだ。で、どうしてくれんだ面倒増やしやがって」
「んー、じゃあ責任取って俺が付き合ってやる。だから彼氏とは別れろ」
「却下だ」
「一番良いアイディアじゃね?なぁ広瀬もそう思うだろ?」
「…………」
「数馬を困らせんな。お前はどうしてそんななんだ?俺をからかって何が楽しいんだ」
「前にも言ったと思うけど、みんな俺が寄ってくと喜ぶのが普通なんだよ。自分で言うのもアレだけど、俺モテるんだわ。なのに貴哉はそうじゃない。俺に対してそんな態度なのは貴哉ぐらいだ」
「みんなの頭がおかしいんだな」
「そうかもな。だから良いんだよ貴哉は。俺追われるより追いたいんだ。だからファンとかには全く興味ねぇ。いくら見た目が良くてもこれっぽっちも魅力感じねぇ。貴哉はドストライクだ♡」
「そっか。じゃあ俺が桐原を追えば興味無くなるんだな?」
「多分な。そんな事出来るのか?」
「追うだけなら出来るだろ」
「やってみろよ」
不敵に笑う桐原にイラッとしつつも追う方法を考える。まず追うって何だ?追われるより追いたいだと?あ、早川が俺と付き合う前にしてた事か?
うーん、どんなだったっけなアイツ?
確かイラッとする事を言われてそれに言い返して、更に上乗せして返されて……時々優しくされたりもしたな。そういえば桐原みたいに売店でオニギリを買ってくれた事があったな。
あー、ちくしょー早川を思い出すと何か苦しいぜ。
「貴哉、大丈夫?無理する事ない」
「ああ」
俺の気持ちを察したのか数馬が心配そうに覗き込んで来た。ほんとにコイツは良い奴だなぁ。
「まぁ俺からも無理にやれとは言わないよ。貴哉にはそのままで居て欲しいからな」
「桐原さ、俺が辛そうなのって見たいのか?」
「いや、見たくねぇけど」
「今早川の事考えたらすげぇ苦しくなった。頼むからそっとしといてくれよ」
「……そんなに嫌われてたか俺って」
「?」
「人に嫌われるって今まで経験無かったから迂闊だったな。分かった。貴哉が本気で言うならそうする」
「あ、嫌いとかじゃなくて」
「結構辛いんだな、嫌われるってさ」
「桐原……」
そ、そうだ、桐原も悪い奴じゃねぇ。ただ少し、いやかなりだけど迷惑な事しやがっただけ。ん?十分悪い奴じゃねぇか?
でも桐原とこうして飯食えてるし、やっぱり悪い奴じゃねぇんだと心のどこかでは思ってるんだよな俺。
「でもそれも悪くねぇな」
「……あ?」
俺の葛藤も一瞬だった。しょげたかと思ったら今度はニヤリと悪そうに笑ってた。
「そうかー俺ってこんな性癖あったんだなぁ♪好きな奴に冷たくされるのが良いとか変態だな♪」
「何楽しそうに言ってんだよ。やっぱ頭おかしいわアンタ」
「それそれ♡貴哉にそういう事言われるの嫌じゃねぇんだわ。むしろ興奮する♡」
「ど変態が!興奮するとか言うな!」
「き、桐原さん!貴哉を困らせないで下さいっ」
「おー、広瀬が怒ってる。分かった分かった。困らせないようにする」
本当に分かったとは思えねぇが、数馬が怒ったのが効いたのかもうそれ以上は茶化して来なかった。
「桐原の正体、ファンが知ったら泣くな」
「そうか?逆に新情報とか言って盛り上がりそうだけど」
「自分で言ってんな」
「なぁ貴哉さ、ワザとか?自分から突っかかってくるなんてさ。彼氏が惚れたのも分かる気するわ」
そんなつもりはないが、俺から突っかかってるらしい。数馬を見るとキョトンと顔をしていた。
何だろうな、今はこうして誰かとやり取りしてないとダメな気がするんだ。
じゃないと早川の事を思い出して……
「くっそー!早川のバカやろー!」
「ちょ、貴哉うるさいっ」
桐原にしーと人差し指を唇に当てるジェスチャーをされた。
とりあえず今は数馬と追試を何とかする!そして戸塚の件も片付ける!
俺は無理矢理プランを立てて早川の件を忘れようとしていた。
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