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邪魔だから帰れ帰れー
下駄箱に背中を付けて立ったままイヤホンで音楽を聴いていた早川に近付く。
「おー早川、悪い待たせたな」
「貴哉……って、その人……」
声を掛けるとイヤホンを取って俺を見た。そして早川の視線が俺の後ろに移ると顔が強張った。
「何か変なのに絡まれた」
「やあ初めまして!えーっと、早川空だ!」
「っ」
「こいつ俺の名前も知ってたんだよ」
「こいつって、二年の一条さんだろ?」
「おっ!君知ってるね~♪一条紘夢だよーん」
「で、貴哉に何の用なんですか?」
「貴ちゃんとお茶したかったんだけど、空くんとデートみたいだからまた今度にするよー。お邪魔しちゃ悪いしね」
「おー、邪魔だから帰れ帰れー」
「あはは!本当に貴ちゃんっておもしろーい♡じゃあまたね~」
あっさり引いて行ったけど、何だったんだあいつは。あまり気にせず靴を履き替えようとしてると、早川に肩を掴まれた。
「貴哉!何であの人と一緒にいたんだ!?何もされてないか!?」
「何だよいきなり?早川あいつと知り合いなのか?」
「知り合いってか知らない人はいねぇだろ!一条紘夢って言ったら超有名人だろ!」
「はぁ?俺知らねーからそうでもねぇだろ」
「とにかくいい噂は聞かないから関わらない方がいい。もー、貴哉って変な人に好かれるんだからぁ」
「その変な人って早川の事かー?」
俺がふざけて言うとやっと笑ってくれた。
さっきの出来事もあるし、銀髪に変な噂があってもおかしくはねぇよな。見た目からしても浮いてるし。まさか二年だったとは思わなかったけど。
「あ!そう言えば早川!お前頭良かったのかよ!」
「うん。人並みには出来るぜ」
「どこが人並みだ!戸塚の次とかズバ抜けてんだろ!」
「まじ?それは知らなかったー。へー、俺ってそんな上の方だったんだ」
「何で隠してたんだよ?」
「別に隠してねーよ?」
「はぁ、俺だけ追試かぁ。この裏切り者め」
「貴哉赤点あったの?」
「おう全部だと」
「全部!?やる気ねぇな!」
「でも追試は五教科でいいらしい。他のは授業でなんとかカバーしろって」
「え、それ追試でクリア出来なかったら?」
「俺の夏休みが無くなる……」
「それはダメだ!貴哉!俺が教えてやるから頑張れ!」
「でもよー、無理じゃね?数学とか一桁だったし」
「諦めんな!夏休みは貴哉と行きたい所、やりたい事いっぱいあるんだから!」
「俺もそうだけど……」
やっぱ俺が勉強出来るなんて思えねぇわ。
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