お礼期待してるから♡

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お礼期待してるから♡

 帰り道、早川の後ろでぼんやり考える。  退学かぁ。俺ってそんなに悪い事してるかぁ?そりゃ他の奴らは毎日しっかり朝から最後まで授業受けてるみてぇだけど、本当に俺だけなのか?  担任が言うには俺だけが悪いみたいな言い方だけどさ! 「貴哉~、今日から勉強教えてやろっかー?」 「本当か?まぁ早川頭良いみたいだからな。よし、頼むわ」  やるだけやってみるか!早川も一緒なら頑張れるかもだしな!   「てか貴哉んちって勉強道具ねぇだろ?」 「ねぇよ」 「まずは道具揃えるか」 「えー、めんどくさー」 「……貴哉ってさ、前から思ってたけどよく城山受かったよな」 「ああ、自分でも驚いた。あん時は必死で頑張ったからな!」 「じゃあ今回も必死で頑張ればいいんじゃね?」 「あんなのもう出来ねぇよ!」 「まぁいいや。本屋寄るぞー」  本とか良く分かんねぇけど、早川に全部任せりゃいいや。さすが頭良いだけあってすぐにそれらしい棚の方へ向かって行く。  俺もついて行くけどどれも同じ本にしか見えねぇや。 「ここら辺の買っておけば間違いないだろ」 「ふーん。って高!俺そんなに金ねーよ!」 「俺が買ってプレゼントするよ。夏休みにはバイト始めるし」 「本当か!?助かるぜ!」 「お礼期待してるから♡」  太っ腹な早川に助けられて、無事に勉強道具を揃える事が出来た。親切にノートまで買ってくれたぜ。  さて、後は帰って勉強だ。  チャラ男号に乗り、俺ん家まで走る。   「はぁ、まさか俺が勉強するなんて……気が重いぜ」 「大丈夫♡俺がいるから♡」  頭良い奴が友達にいるといいなとは思うけど、残念ながら俺の周りには居なかった。戸塚がいるだろと思うだろうが、生憎嫌われてるから相手にもされねぇだろ。  それが意外や意外、彼氏の早川が戸塚並みに出来る奴だったなんてな!ラッキーだぜ俺~。  そんな期待を込めて俺の部屋で早川と小さいテーブルに向かい合いながら買って来た『これで誰でも学力アップ高校数学編』を広げて見る。  俺にはさっぱりだが、早川は理解してるような顔をしていた。 「本当に基礎が載ってるね。これやっとけばテストいけるよ」 「よし!早速教えてくれ!」 「え、だからこの本読んでやってれば大丈夫だってば」 「いやいや、お前来た意味あんの?」 「あるよー♡貴哉の勉強終わったらイチャイチャするんだ♡」 「殴るぞ!読んでも分からねぇから教えてくれって言ってんじゃねぇか!」 「えー、教えるって言ってもなぁ。書いてある事をやるだけだし……あ、じゃあここ読んでからこの問題やってみろよ。めちゃくちゃ分かりやすいぞ」 「はー?どこが分かりやすいんだよ?xとか何?何でアルファベット出て来てんだよ。アルファベットって足したりかけたり出来んのか?」 「ぷっ……」 「てめぇ、今笑っただろ?」 「そんなまさか!真剣な貴哉を笑うなんて事ある訳……あはは!ダメだ!おもしれー!」  とうとうベッドにゴロゴロしながら笑い始めた。こうなる事は薄々分かっていた。早川が人に勉強教えるなんて出来る訳がないってな。 「お前もう帰れ!役立たずが!」 「えー、俺帰ったら貴哉が勉強やってるか監視する人居なくなるじゃん」 「監視ってなんだ!そもそも教えてくれる為に来たんだろ!」 「てかさ、俺だって自分んちで勉強なんかしねーのに人に教えられる訳ねぇじゃん」  嵌められた!こいつ、俺んちに来たくて教えるとか嘘ついたんだ!人が真剣に悩んでるっつーのに!
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