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この役立たずが!
昼休みになると、すぐに早川がやって来た。
俺は銀髪を待つつもりだったからのんびりしてると何か急かされた。
「貴哉!早く逃げるぞ!」
「いや、逃げねぇよ」
「何言ってんだ!一条さんが来ちゃうだろ!」
「なになにー?逃げるって何からー?」
ここで後ろの席に居た直登が入って来た。
一から説明すんのめんどーだな。
「一条さんから逃げるんだ!」
「一条さんって、二年の?何で追われてるの?」
「貴哉が目付けられてんだよ」
「えー!それはヤバいよー」
「直登も知ってんのか?銀髪の事」
「まぁ噂ぐらいはね」
「もー!そんな事より貴哉行くぞ!」
とうとう早川は俺の腕を引っ張り出した。それを払うと驚いた顔してた。
「悪ぃけど、あいつの話聞いてくるから」
「なっダメだって言ってんだろ!」
「うるせぇ!俺には藁にもすがる思いなんだよ!」
「ちょ、二人共喧嘩しないの~!」
「貴哉、俺の言う事じゃなくて一条さんの言う事聞くのかよ」
「当たり前だろ。実際早川は俺に勉強教えられねぇじゃん」
「だからって一条さんが教えてくれるとは限らねぇだろ」
「生徒会長に会わせてくれるんだ。銀髪がダメなら生徒会長に教えてもらう」
「教えてくれる訳ねぇだろ!貴哉の分からず屋!」
「黙れ!この役立たずが!」
「っ……」
早川は何かをぐっと堪えるような顔をして、黙ってどこかへ行ってしまった。
ちっ何なんだよあいつ。何で早川に命令されなきゃいけねーんだよ。
「あーあ、空くん行っちゃった。最後のは言い過ぎじゃなーい?」
「ふんっ知るか」
「何があったのか知らないけどさぁ、一条さんには気をつけた方がいいよ?あと生徒会長って言ってたけど、そこも心配~」
「どいつもこいつも何なんだよっ俺には後がねぇんだ!夏休みの為ならなんだってやってやる!」
そうだ。俺は夏休みがなくなるかもしれないんだ。今は早川よりも追試の事を考えよう。
そこへ廊下の方が騒がしくなったと思ったら派手な銀髪が教室に入って来た。
「貴ちゃーん!迎えに来たよー」
「おー、今行く」
「マジで来た!」
「じゃあちょっと行ってくるわ」
「な、何かあったら電話して!」
さすがの直登も少しビビってる?ふーん、銀髪ってそんなにすげぇ奴なんだな。
迎えに来てくれた銀髪についていくが、いつも以上に周りが見てくるけど、それだけこいつが只者じゃねぇって事だろうな。早川も直登も言ってたし、悪い話だったら逃げよう。
「そっか~、彼氏と喧嘩しちゃったのか。いいの?彼氏は反対なんだろ?俺と関わるの」
「良くねぇって言ってもお前から寄ってくるだろ」
「分かってるねー♪俺、貴ちゃんの事気に入っちゃったんだぁ♡」
「助けてくれるって話だから付いて行くだけだ。話が違ったり何かを要求するようなら帰るからな」
「あはは、それなら大丈夫!助けるのは本当だし、何も求めたりしないから」
明るく笑う銀髪。こうして話してると悪い奴には見えねぇな。
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