黒の英雄

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 転がっているのは、骨と銀が結合した遺物たち。ここから骨を全て取り除き銀だけを抽出していたのだが。あたりには大量の骨と銀が散らばっている。 「探せ、俺のユナを返せ、じゃなきゃ次は左足だ!」 「お、俺の家族を先に――」 「俺の家族が先だ」  パンッ。  眉間を撃たれ息絶えた側近を冷たく見下ろし、大統領の首をナイフで思いっきりかき切った。 「ひぐううう!?」  こんな奴の相手をしても、ユナが戻ってくるわけではないのは分かりきっているから。 「何なんだよ」  バタバタとのたうち回る奴の頭を踏み潰して歩く。 「何が正義だって?」  側近につけていた盗聴器から聞いていた先程の会話。怒りを通り越して笑える、気が狂いそうだ。 「誰かなんか言え、畜生ぉ!」  誰も何も言わない。仲間は全滅した、焼かれた者は灰となった。サロだけだ、サロしかいない。ユナは、いない。  うぎゃああん! 「!?」  いや、もう一人いた。声のほうに走る。そこには、全身を銀で覆われた赤ん坊。 『私が守るから』  ユナは、ちゃんと約束を守っていた。  震える手で抱き上げると、表面の銀はぺりぺりと剥けて普通の皮膚が現れる。ただし体の至るところが銀のままだ。生まれつきなのか、焼かれた影響なのかはわからないが。左足と右手、それに背中や腹もまだら模様で銀だ。  『私が守るから。だから、この子を守ってねサロ』  きっと、そう言いたかったのだ。ユナは。 「あ、ああああ! うわあああ!」  抱きしめて泣くこと以外、サロにはできなかった。 「遅い!」 「ぶー!」  父との戦闘訓練、今日は一段と厳しい。  結局金属を体に持つ人間はあれから増え続けている。銀だけではない。本当かどうかはわからないが金や銅、白金などもいるとか。  他のレアアース、レアメタルもいるはずだと「メタルヒューマン狩り」が普通となってしまっている。  サロと息子のユウも追われる毎日だ。今年で八歳、一人で生き抜くための訓練は続けている。  生身の人間であるサロはいつ死んでもおかしくない。残された息子が一人でも生き残れるように、知識と経験を授け続けている。  今日ユウは油断していた、狙撃をされたのだ。偶然銀の部分で防げたので怪我はしなかったが。叱られ、厳しい訓練が始まった。
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