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同じく家族を強制的に連れていかれた仲間たちと一緒に、すぐに別の作戦を練る。救出失敗の知らせは軍内を駆け巡っているはずだ。一秒でも早く助けないと殺されてしまう。
武器庫を爆発させて、そちらを囮にしているうちにもう一度助けに行く。そう話を急いでまとめた時だ。敷地内から大勢の悲鳴が聞こえた。
巨大な炎と黒煙が上がる。
「え?」
目を見開いてそれしか言えなかった。ここにいる全員一般家庭で育った者たちだ。だから知っている。
酸化銀を銀に戻す方法は、加熱だということを。
「嘘だああああ!!」
サロは叫びながら走った。他の仲間たちも走り出す。
炎の中からは断末魔の悲鳴があちこちから聞こえる。拘束されたまま、意識あるままに焼かれているのだとわかる。
「撃て」
大統領の指示のもと、集まった者たちを次々と射殺していく。邪魔者を引き寄せるのと銀を抽出する作業がいっぺんに終わって手っ取り早い。
「無駄に増え続ける貧困層は財政を圧迫する。国を蝕む悪でしかない」
「はい」
「それならこれは正義だ。非人道的だと言うバカも出てくるだろうが、些細なことだ。レアアースもレアメタルも数が減り続けている。国連とて偉そうに言いながら、結局『どうかそれを売ってください』と言ってくるに決まっている」
「そうですね」
「黒は悪しき象徴ではないか。それを駆除して何が悪い? 穢らわしいものを掃除しているのだよ我らは。殺しているのは人間じゃない、ミュータントだ」
「仰るとおりです」
炎がおさまった頃、状況確認するために大統領が現場の者に電話をかけるが応答がない。しびれを切らして自ら向かった。
「おい、何故誰も応答を――ぎゃっ!?」
突然側近に後ろから殴られ大統領は地面に転がる。すると一人の男が近づいてきた。そして大統領を無表情のまま見下ろし、持っていたナイフで右手を手首から切断する。
「ぎゃあああ!?」
見渡せば部下たちは全員死んでいる。側近の男は尻餅をつきがら必死に叫んだ。
「お、俺は悪くない! 家族を人質にとられたんだ、仕方ないだろ! こんな外道なことをするお前が悪いんだ!」
サロの両親は先進国の軍人だった、それも汚れ仕事中心の裏の組織。奇襲や暗殺方法など幼い頃から教えられて育った。
だから今回仲間たちのリーダーになることもできた。事前に側近の男の家族を人質に取っていたのもサロだ。
「どこだ、ユナは」
「ひいいい!?」
「どれだよ! ユナは!!」
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