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「お前は普通の人より体重が重い分動きが鈍い。体力勝負になったら負けるって言ってるだろう。銀に頼りすぎるな、貫通する武器を使われるのは時間の問題だ。反射神経と胴体視力を鍛えろ、一撃で終わらせろ!」
「やってるもん!」
「まだ遅い」
「うー……」
「だが、昨日よりは少しだけ早くなった」
「ほんと!?」
父に褒められるのは久しぶりだ。それが嬉しくて目をキラキラさせる。
「だから諦めずに続けろ。お前はちゃんと成長してる」
「うん!」
きちんとした研究所で調べたわけでは無いので、体が何%銀なのか。あとどのくらい生きられるのかなどはわからない。銀色だった部分も今は全て酸化して真っ黒になった。血も黒い。
今わかっているのは普通に生きることができず、世界中から狙われているということ。それならばまず自分が守り、そしてユウが自分で生きられるようにできることをやるだけだ。
ユナは約束を守ってくれた。私が守るから、というのもそうだが。世界が混乱する前に二人で交わしたあの会話。
たとえ普通の子供じゃなかったとしても、家族として助け合いながら生きる。その言葉を信じていたから、ユナはユウを守れた。
自分は助からないとわかっていた、だからこそ子供はサロが守って育ててくれると。そう信じた。それを精一杯返したい、彼女の為と自分の為と息子のために。
何か音がして二人は身を潜める。単眼鏡でみれば、ハンターたちに一人の少女が追われているようだ。腕から流れているのは真っ青な血。
「青。銅か」
「父ちゃん」
下手な同情で助けに入れば自分たちの身が危うい。感情に揺り動かされて愚かな選択をするなと父は厳しく言ってきた。
「何だ」
「えっと、あの。た、助けたい」
「何のために?」
無表情の父。背筋に寒気が走るが、ここで目を逸らしたら即却下となってしまう。
「あの子は、親がいないよ。俺と違って頼れる人がいない」
「そういう運命だな」
「でもここで俺たちがいるのも運命だ」
父はこういうロマンチックな考えを嫌う。現実を、効率を重視する。それでも。
「弾薬が少ないのは知ってるだろう。無駄に使う気はない」
「無駄じゃないよ! あ、いや違うか。ええっと、使わなくても勝てる」
「根拠は」
「動きが鈍い。全然連携も取れてないし。狙撃も下手だ、弱いよあいつら。勝てる」
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