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地球
「ねぇ知ってる? 地球ってのびるんだよ」
鉄でも溶けるような酷暑日。エアコンがガンガンにかかった部屋で、友人から放たれた爆弾発言。
「地球がのびる……なんて、そんなことあるわけ……」
「あるんだなぁ、実は」
いたずらっぽく笑うと、〝地球が伸びる〟理由を教えてくれた。
「地球って、硬いプレートで覆われているでしょう? でも、その中に、例えるならチーズみたいな、ふにゃふにゃしたものが詰まってるんだって。そしてチーズは温めると溶ける。つまり、地球も、太陽の熱によってその中のふにゃふにゃが溶けて、のびるんだよ」
どう、すごいだろう、というように胸をそらす友人に対し、僕はマリアナ海溝よりも深い溜め息をついた。
「あのさ、どこでそんなオカルト話聞いたかわからないけど、そんなことがあるわけないんだよ」
「あるわけあるから言ってるのに……。どうして信じてくれないの」
「信じるも何も、世の中の常識として――」
「常識なんて、すぐにひっくり返るよ」
まだ最後まで言い終わらないうちに、恐怖を感じるほどに友人が満面の笑みで言う。
「だって、これからすぐにみんなが見るんだもん」
それなら常識になるでしょう? と、とても嬉しそうに。
「なにを、見るって言ってるの」
いつもと変わらぬけれど、どこかいつもと違う友人に対し質問を投げる。
「なにって、地球がのびるところをだよ。といっても、のびたらすぐ、みんな死んじゃうけどね」
その友人の言葉を聞いて、すぐに外を見た。しかし時はすでに遅し。地面が動いている。宇宙から見たら、地球がどんどんと楕円形に伸びているのがわかるだろう。このあとどうなるか。そんなものわかりきっている。
チーズでも輪ゴムでも、のばし過ぎたら千切れるのだから。
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