染み

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 それは、ちょうどトイレの便座の下部にある。  トイレットペーパーの芯が、散乱しているところに、描かれていた。  三人の顔だ。  それもよく知った顔。  今の時間帯は、家にいるはずの妻と娘と息子のドロドロと溶けている苦悶の表情が、落書きしてあった。 「おまえは あんたは てめえは!」 「後ろ 後ろだ 後ろで ……」 「トイレに トイレに 何かいる ……」  私の家のトイレに、何かいるのだろうか?  いや、いたのだろうか?  落書きは、何かを私に知らせたかったのだろうか?  ……    そういえば、朝家を出る時に、隣近所にある動物園の檻から南アメリカから運ばれた巨大なアナコンダを一匹だけ誰かが盗んだと、不審がられていたんだった。 
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