のびるわかめ

4/13
前へ
/13ページ
次へ
 その夜娘に相談を受けた漁協総務課長の純一は悩んでいた。彼もワカメ騒動については耳にしていた。のびるワカメなんか売り物になるはずはない。だが町民はこの予想外の事態に皆落胆している。特産品であるワカメの危機は町全体の危機でもある。何より、いつも我が儘を言わない、家にいても大して会話をすることもない娘がこうして必死にお願いをしているのだ。それを無下にするわけにはいかない。  純一は翌日組合長の佐藤幸吉に相談した。幸吉は浪曲が趣味のなかなかイカした組合長で、男女問わずファンが多い。  話を聞いた幸吉は迷わず答えた。 「ワカメを沢山買い取って出品するべ! 町の危機を中学生が救おうどしてくれでるんだ、俺達が立ち上がらねぇでどうする!」  純一は幸吉の言葉に胸が熱くなった。同時にすっかり忘れていた情熱が湧き上がってくるのを感じた。 「そうですね! 私たちが弱気になっていては駄目だ、頑張りましょう!」  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加