18人が本棚に入れています
本棚に追加
「どちら様ですか?」
まったく見覚えのない女性に、俺は尋ねた。
「あ、あの! 私、昼間に助けていただいて……その、恩返しをしたくて伺いました」
「恩返し?」
俺は、昼間の記憶を思い出した。俺が助けたのは、小さな女の子だった。
まさか数時間でこんなに成長しないだろう。
考えながら女性を見ると、彼女は寒さからかガタガタと震えている。女性は「恩返しをさせてください」とブツブツつぶやき続けていた。
時計を見ると夜中の12時をすぎている。どこからきたのか知らないけど、もう終電もないだろう。こんな時間にくること自体は怪しいが、危害を加えられるような雰囲気ではない。俺は仕方ないと思い、女性を一晩だけ泊めてあげることにした。
「私、こういう生活感のあるお部屋、大好きなんです!」
女性が、狭くて雑然とした俺の部屋を見回しながら言った。
ただの散らかった部屋なのに、どうしてそんなに楽しそうなんだろう?
俺たちは簡単に自己紹介をした。彼女は、黒羽サヨといい、普段は実家で家事手伝いをしているらしい。
「家事ならお任せください!」
自信満々に胸を張り腕まくりをし始める彼女に、「明日も仕事だから」と、体を休める提案をした。「私はどこでも寝られますから」とサヨさんは言い張ったが、俺は床で、彼女にはベッドで眠ってもらうことにした。
最初のコメントを投稿しよう!