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「そ、それは、なんですか……?」
俺は震える手でサヨさんの額を指さした。
「これは……触覚、です」
「触覚ぅぅ!?」
「はい。私は……ああっ!」
サヨさんが再び悲鳴をあげると、今度は右眉の上から触覚が伸びた。
「うわあああ!」
「すみません、すみません! 私の本当の姿はゴキブリなんです。ゴキブリって嫌われているでしょう? だから魔法で人間の姿にしてもらったのですが、タイムリミットがあるみたいで」
「ひっ! ゴキブリ? タイム、リミット……?」
うめいてうずくまったサヨさんは、少しずつ変貌し、俺の目の前には人間の大きさの巨大なゴキブリが、6本の足をくねらせ恥ずかしそうに立っていた。
これ、ヤバすぎる。このデカさで攻撃でもされたら……はっ! ゴキブリって雑食だよな。俺、食われちゃうかも。なるべく怒らせないように、帰ってもらおう。
「和真さま、こんな姿ですみません。大丈夫でしょうか?」
「……あ、ああ! 全然、大丈夫! なんというか、黒くて、テカテカしてて、カッコかわいいよね!」
「いやだあ、和真さまってば♪」
巨大なゴキブリ姿のサヨさんの一番上の前足が、俺の肩を小突いた。
「おわっ!」
声は清楚なのに、かなりの威力だ。足のとげが痛い。
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