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俺は目を覚ました。
……あれ? 見覚えのある天井。いつもの朝だ。なんだ、今までの出来事は全部夢だったんだ。ゴキブリのサヨさんも、仲間の小さなゴキブリたちもいない。まったく最悪の夢だった。にしても、めちゃくちゃ怖かったなー。汗でびちょびちょ。もう本当に勘弁してくれよ。
「サヨさん――なんてなー」
「はい♪ 和真さま」
俺の頭上から声がした。飛び起きて振り向くとゴキブリ姿のサヨさんと仲間のゴキブリたちがずらりと控えていた。
「気が付かれてよかったですわ」
「ど……して? 夢だろ全部!! 嘘だ嘘だ嘘だー!」
「和真さま? 大丈夫ですか? そんなに震えて」
恐怖から体が勝手に震えて仕方がない。ぞわぞわとなんとも言えない気持ち悪さが体を駆け巡り、全身に鳥肌が立つ。
「わかりましたわ! 寒いのですね? 昨晩、私がベッドで眠らせていただいた恩返しをしないとですね♪」
「なにするつも――」
「私たち総動員で温めさせていただきますわ♪」
ピー! とサヨさんが笛を吹くと、小さなゴキブリたちが俺の体にまとわりついてきた。
「ひっ! 嫌だ! やめろ! うわああああ!!」
再びパニックに陥った俺の泣き叫ぶ声が、アパート中に響き渡った。
end
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