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堀田浩二はふてくされた態度でしぶしぶ頭を下げた。二十七歳の新進マジシャンで、この場ではが最年少だった。
「刑事さん、この現場検証ってやつ、どのくらいかかるんですかね? 明日は福岡で仕事なんで、今日中に移動しないとまずいんですけど……」
「いや、そうお手間は取らせません。一通りの事実確認さえできれば十分なので」
堀田は堂島の答えに納得した様子はなく、無言でトランプをもてあそび始めた。
「あとはあちらに……」
堂島はそう言いながら中央の客席の方に向き直ると、苦り切った表情で彼らを見つめている初老の男性を指し示した。
「薫子さんの夫、若松孝太郎さんです。ご自身で別の会社を経営されていて、ショーの関係者ではありませんが、薫子さんのことを最もよくご存じなので、検証に参加していただいています」
「彼は昨日もこちらに?」
「ああ、ここに座っていた。始めから終わりまでだ」
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