冬の蝶

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 前園はそう言いながらピンセットを使って蝶を取り出し、小さな丸テーブルの上に敷かれたガラス板の上に置いた。通常のクロアゲハやカラスアゲハと比べるとやや小型で、後翅に白い斑点が帯状に並んでいる。 「死んでいるね。寒さにやられたか……」 「騒ぎが一段落した時、舞台の隅に落ちているのを捜査中の警官が見つけました」 「種類はお分かりですか?」と堂島が柏木に尋ねた。 「シロオビアゲハですね。雄だ。昨日メールしていただいた画像であたりはつけていたんですが、間違いありません」 「どんな蝶なんですか?」 「日本では南西諸島に生息している蝶です。沖縄の八重山諸島だと年中見かけるそうです。幼虫がシークワーサーの葉などを食べるので、害虫と見なされることも多いですね」 「シークワーサーか、沖縄らしいな」 「アゲハチョウの仲間は、幼虫が柑橘類の葉を食草とするものが多いんです。それで、沖縄だとシークワーサーが餌にされてしまう」 「なんにせよ、この季節でも比較的容易に入手できる蝶なんですね」 「ええ、今回この蝶が使われた第一の理由はそれでしょう」 「他の理由としては?」
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