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「長いと言ったって、年二回、ショーの演出を引き受けているだけだ」
「本当にそれだけならな……」
「下種の勘繰りはやめてもらいたいね。若松さん、別居して五年にもなるのに、まだ未練が?」
「おい、俺を怒らせるなよ」
「どれだけ権力をお持ちか知らないが、刑事さんの前で人を脅すというのはねえ、あまり賢い振る舞いとは言えないんじゃないかな」
「くそ、こいつ……」
若松が歯噛みしながら黙り込むと、堂島が柏木に声をかけた。
「柏木さん、そろそろ薫子さんの控室に行きましょうか。村上さん、申し訳ありませんが、我々と一緒に来ていただけますか? 当日の彼女の行動をチエックしておきたいんです。
堂島は残りの人々の方に向き直って言葉を続けた。
「すみません。他の方々はもうしばらくこちらでお待ちください」
「どうぞご勝手に」
若松が大げさに肩をすくめながら答えた。
青嶋薫子が使っていた控室は六畳ほどの広さで、壁に取り付けられた大型の鏡の前に、幅約二メートルの机と革張りの黒い肘掛け椅子が置かれているだけだった。
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