冬の蝶

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「別に馬鹿にしているわけじゃないぞ。何ていうか、『こだわりの強い人』ってくらいの意味だ。それはさておき、柏木さん、今回の事件をどうお考えですか?」 「そうですね……、僕の役割は、犯人がどうやって青嶋薫子の唇に蝶を留まらせたのか、その方法を明らかにすることですよね? それに関しては、もう少し詳しく調べれば、何とかなるんじゃないかと思っているんですが……」 「やはりフェロモンを使ったんですかね?」 「いえ、その可能性は低いと思います。蛾の仲間に関しては雄を引きつけるフェロモンが発見され、合成が実現しているものもありますが、シロスジアゲハで同じような作用をするフェロモンが見つかったという話は聞いていません。それにしても堂島さん、ずいぶん詳しいですね」 「小学生の頃、ジュニア版のファーブル昆虫記を読んだんですよ。その中にフェロモンの話が出てきたような」 「ああ、『オオクジャクヤママユの夜』ですね。あのくだりは本当に感動的だ」 「ええ。ひと夏かけて、昆虫記は全巻読みましたよ」 「警部補が昆虫好きだったなんて、ちょっと意外だなあ」と前園が言った。
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