冬の蝶

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「岐阜の山奥で育ったんだ。まわりは昆虫だらけ、意外でもなんでもないさ。それで、柏木さん、フェロモンではないとなると、どんな方法だとお考えで?」 「まだ具体的なことは何も……。ただ、すでに犯人が一度成功させているんですから、必ず答えがあるはずです」 「よろしくお願いします」 「それと、今回の事件で一番気になっているのは、あのトリカブトなんです。なんというか、あれは犯人からのメッセージなんじゃないかと」 「メッセージ、ですか?」 「ええ。蝶を操る方法だけでなく、そちらの謎も解きたいと思っているんですが……。堂島さん、あのイベントホール、もうしばらく現状のままにしておけませんか?」 「うーん、貸ホールだから向こうは嫌がるでしょうが、とにかく掛け合ってみます。期間はどのくらい必要ですか?」 「一週間、無理ならなんとか五日で」  柏木はそう答えると、カップに残ったコーヒーを飲みほした。  現場検証の翌々日の夜、柏木は自宅の書斎で机に向かっていた。背後の本棚には学術書がずらりと並んでいるが、ところどころに、カプセルトイの自販機で出したらしい土偶や仏像、昆虫などのフィギュアが飾られている。
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