冬の蝶

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 机の上には、蝶を操る様々なアイデアを走り書きしたレポート用紙が散乱していて、柏木の表情は冴えない。明日になれば、琉球大の研究チームに依頼しておいたシロオビアゲハが届くというのに、犯行を再現する方法は、まだ完成していない。ぶっつけ本番などもちろん論外で、予備実験を開始する期限が迫ってきていた。  柏木は書きかけていたメモに大きな×印をつけると机を離れ、丸いサイボードの上のチェスボードをのぞき込んだ。アイデアが行き詰まった時は、気分転換にチェスのプロブレムを解くのが彼の習慣だった。
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