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―白の駒で取りになっているのはクイーン、ルーク、ナイトの三つ、向こうはクイーンとルークの二つで、クイーンにビショップの紐がついている。忙しいのはこっちだ。クイーンを取りたいが、王手でルークを取られてそのまま詰んでしまう。といって、ルークを先に取れば、クイーンを只取りされる。クイーンでルークを助けると、ルーク交換からのクイーンとビショップの攻撃が厳しい……。逆を考えろ。こちらが一手遅れているのなら、手を稼ぐ方法を見つければいい。逆か……、非擬態タイプが紫外線を反射しないということは、吸収するということだ。紫外線の反射は雄には無意味だが、吸収のほうはどうだ?
「ああ、そういうことか……」
柏木はそうつぶやきながら微笑むと、ナイトを捨て駒にする一手を放った。
ホールの使用期限が切れる五日目の午後、柏木の要望で、再び青山のイベントホールで現場検証が行わることになった。柏木達が到着した時、前回と同様に、若松だけが客席に座り、他の者は舞台中央に集まっていた。
「ご多忙のところ、何度もご足労いただき恐縮です」
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