冬の蝶

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 型通りの堂島の挨拶に、若松がすかさず言い返した。 「まったく、やっと葬儀が片づいたと思ったら、また招集だ」 「すみません、僕が警部補にお願いしたんです。犯人がどうやって蝶を操ったのか、皆さんにご覧いただこうと思います」 「もう一度蝶を飛ばして、唇に留まらせて見せると?」  若松は身を乗り出しながら柏木を見つめた。 「ええ、多分うまくいくと思います。では、皆さん、あの夜の配置についてください。青嶋さんの役は村上さんにお願いします。青嶋さんの控室にレモンジュース、メイク道具、ドレスを置いておきました。青嶋さんがやった通りに支度を整えて、舞台にお戻りください。デザインのスタッフの方、どなたか村上さんの着付けのお手伝いをお願いします」 「あの、僕はどうすればいいんですかね? あの時は出番が終わって、楽屋で片づけをしていただけなんですが」と、マジシャンの堀田が言った。 「ああ、失礼しました。では、舞台の袖か客席から様子をご覧いただけますか?」  堀田は無言でうなずくと、若松の隣の席に向かった。 「村上さん、支度が整うまでにどのくらいかかりますか?」と柏木が村上朋佳に尋ねた。
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