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「そうですね、十五分というところでしょうか」
「では、蓮実さん、十五分たったところでBGMを切るようご指示願います。ということで、村上さん、BGMがやんだら登場の合図です」
「わかりました」
村上が控室に向かうと、柏木は堂島、前園とともに下手側の舞台袖に移動した。舞台袖の床には、柏木が大学の研究室から運んできた、幅三十センチ、高さ二十センチほどの保冷バッグが置かれていた。
「何が入っているんですか?」と堂島が尋ねた。
「シロオビアゲハです」
「アゲハ? 保冷バッグに?」
「保冷できるいうことは、保温もできるということなんです。使い捨てカイロが一緒に入れてあります」
柏木はバッグの上部のファスナーを開けて、内部を堂島達に見せた。
「こんな風にネットを張っておけば、逃げ出さないし、取り出すのも簡単だ。ビニール管を通しておけば、窒息の心配もない」
「なるほど……」
ネットの中にはシロオビアゲハの雄が三匹入っていた。
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